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#434 18/04/04

書籍、図書館の近未来はどうなるのか?

昨年(2003年)10月のある日、「老生」はヘンリー・ペトロスキーというデューク大学の教授が書いた「有用なあらゆるものの進化」と題する書物について書評を書いた。その書物自体も極めて興味ある書物ではあったが、このたびまた新しい書物を書いた。タイトルは『書棚の書籍』というものであるが、過去2000年の間に起こった書籍の作り方および書籍保存方法の歴史である。

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パピルスに書かれたスクロールから、貴重な中世の巻物を経由して、今日われわれが常識として承知している書籍までの歴史、言うなれば古代エジプトのアレキサンドリア図書館から、現代の国会図書館までの歴史である。

「老生」としての関心は始めから、この著者が、書棚を必要としない、最近発生したいわゆる電子書籍(e-book)についてどのような視点から見ているかについて関心を持って読んだのであった。別の言い方をすれば、過去の図書館に代わって将来の図書館というものを、どのように著者が見ているか、という点である。過去は過去で興味はあるが、近い将来に書籍と図書館はどうなるのか、という疑問である。本の最初ではなかなか将来のことに触れないので、いささかイライラしたが、ようやく212と213ページに次のように書いているのを発見して、「老生」なりの満足を得た:

「マイクロフィルム化した書籍が開発されたのは第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の時期であり、増加する一方の書棚のスペース不足の問題が表面化していた頃、一時は、そのスペース問題の解決する最終的方法とさえ言われて、もてはやされた時代もあった。読者も図書館も、これで増大するペーパー書籍の問題は解決したとさえ見なされた。勿論マイクロフィルムは壁に映写される、多くの人々はまるで映画を鑑賞する要領で読書を楽しんだのである。この方法は、特に第二次世界大戦中は、入院中の傷病兵に喜ばれたものであったが、かかる手法による読書は、経験的にも好まない、という人々も出てきたのである。

「20世紀の最後の10年間にはコンピューターが現れた。そして大小を問わず図書館において増加中のカード式管理法に代わるものと考えられた。しかしながら、20世紀の終わりには、このコンピューターでさえも、スペース問題が起こることになる。例えば、著者の大学は新しいスペースの確保が最重要課題になっている。勿論、昔ながらの書籍自体に必要なスペースの問題も抱えている。少し古風な人々は従来型の書籍を好み、機器を用いての読書を毛嫌いしている。冗談の好きな人々のなかには、紀元前のBCと紀元後のADと引っ掛けてCD−ROMのことを『新パピルス』あるいはCDと呼ぶひともいるほどである。

「将来いかなる新しい問題が起こるかには係わりなく、電子書籍は多くの読者を引き付けるであろう。一部の人々は、将来は読書の中心の座を占める、と見ているようである。しかし、電磁波の大混乱や頭のおかしいコンピューターハッカーが図書館の電子メモリーを破壊しようとしたらどうなるのであろうか?それまでに墓場に埋められた希少本を求めて一度死んだ書籍の墓堀が流行ることになるのであろうか?電子処理がされようが、あるいはされまいが、こうして発掘された書籍は一応は図書館に入れられることになろう。その場合、その図書館にはフォート・ノックスにも劣らない警備がなされねばなるまい。

「本棚の革命が進行すれば、端末で使用するために、書架には必ず配線が必要になろう。書籍は鎖ではなく電子装置で書架の一部に取り付けられるかも知れないので、書籍が常に収められている場所から、電話回線とコンピューターケーブルの届く範囲内でポータブル・コンピューターとポータブル・スキャナーを用いて書籍を転写する必要が発生するだろう。そのためには、図書館ではすべての本箱の前には机を設置する必要が起こるであろう。机の前に椅子を置くために、書庫の通路も変更を余儀なくされ、やがては、情報スーパーハイウエイ関連の基本構造の一部は、狭い山道の奥にある修道院に設けられた中世の図書館に再び似てくるという皮肉になるかもしれない。


さて、この著者の皮肉は相当なものである。なにしろ最新電子技術を使うがゆえに中世に逆戻りなのである。これを皮肉と言わず何とよぶべきか?この著者の作品にはどうやら常にこの手の皮肉が込められているようである。それこそが、「老生」が好むところではある。この著者によると、どうも進化には皮肉がつき物のようである。ともかく、ヘンリー・ペトロスキーの著作は、この手の皮肉が好きな御仁にはお勧めのようである。

なにしろ、進化の皮肉とは、人間の人生も、良かれ悪しかれ進化の一部だとすれば、皮肉の連続となろう。それもまた、人生の楽しみの一つではないだろうか?


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