日本語     English

#419 01/02/04

ナノテクノロジーが全世界に広まるのに反対する新しい理由

「ナノ」というのは、何となく超微小であることは、大方の読者はご承知であろう。だが、その単位は10億分の一なのである。例えば1ナノメートルというのは1メートルの10億分の一なのである。「老生」にとっては手足の指である合計20本の指で数えられる数以外は全く理解の外。従って「ナノ」を実感することは全く不可能な世界なのである。その「老生」がナノテクノロジーを語るというのは、たとえ外国の雑誌の受け売りとは言え、自分でも苦笑を禁じえないことである。

何となく「ナノ」技術は「善玉」という印象を持っていた「老生」にとっては、それが「悪玉」要素をも持っていることとは全く思いもよらぬ事ではあるが、ともかく、いつものように英国の「ニューサイエンテイスト」の記事(1月3日号21ページ)をご紹介しよう。これは2003年に起こった事柄を纏めた一連の記事中のひとつである。

「老生」がこの記事に関心を持ったのは、目下英国のあるナノテク会社と新しく取引を開始しようと努めているところだからである。そのことは2003年12月8日付けの拙文#411にも記したとおりである。この会社は、目下「老生」が目を付けている製品以外にも多くのナノテクを基礎とした製品を開発中であるので、いずれデイーゼル燃料添加剤に加えて順次手を付けるべく予定を立てているところなので、ナノテクと聞いて「老生」の好奇心が異常に高まったという次第である。ともあれ、「ニューサイエンテイスト」紙1月3日号の記事を先ず紹介する:

「ナノテクノロジーという言葉は読者に恐怖心を与えるものであろうか?2003年以降はほとんどその通りであろう。超小型ロボット(ナノボット)やナノバイオロジーなどの言葉が新聞紙面を賑わせ、英国のチャールス皇太子までもが関心を寄せている。

「筆者(Jenny Hogan)はニューサイエンテイスト紙からこの分野の取材を命じられた。筆者としてはブラッセルで行われるナノテク反対活動家の秘密会合に潜入するぐらいの覚悟であったが、実際にはこの会合に筆者は招待されたのであった。2003年6月にカナダの環境保護団体ETC(これがナノテク活動の急先鋒)がECの議会で会合をもつことになり、筆者は、ナノテク反対活動家、倫理活動家、その他の科学者とともにこの会合に参加した。

「ETCは、これまでも、そして現在もナノテクの完全禁止を求めている。またナノテク研究所などの活動にもブレーキを掛けている。筆者が面談した数名の科学者は大慌てであった。彼らはナノテクを全て禁止するなどは全くの暴挙だと言う。その理由はナノテクというものは非常に幅の広い概念であり、ひとまとめにしての禁止は暴挙だと言うのである。2003年のニューサイエンテイスト紙を概観してもその趣旨の記事が多い。例えば、燃料添加剤(これが「老生」の拙文#411)もあれば医学的目的で用いられるナノ機器のコーテイング、コンピューターのメモリー、薬物デリバリー・システムと多様である。共通しているのは、すべてがナノ単位のサイズであることだけである。会合で次第に明らかになったのは、ETCがナノテクを槍玉に挙げているのは、個々の使用例ではなく、「次世代の大型プロジェクト」として誇大に騒ぎすぎることなのであった。つまり、科学の安全性を問題にするというよりは、むしろ世界秩序を問題にしていることが判明した。

「今や、世界各国の政府はナノテクに大いに関心を持っている。2003年度に米国は数十億ドルの予算をつけた。日本と欧州各国も膨大な予算を持っている。ETCが問題にしているのは、そういう莫大な予算が賢明に使われるか否かという点である。先進国と途上国との間のギャップをより大きくしないか?軍事目的に使われて恐ろしい兵器が生まれてこないか?ETC及び活動家が騒ぐのは、そういった大きな問題に対する関心を引くための手段であるとも思われる。

「ETCが新聞を飾ったのは超微粒子を含んだ日焼け止めに対する反対運動を開始した時であった。二酸化チタンは紫外線をストップする。しかし、同時に健康に悪影響がないかという点を問題にしたのである。筆者が驚いたのは、ETCはなぜ問題の製品のメーカー、例えばパリのロレアル社などと接触していなかったという点である。筆者は同社に接触してみた、すると同社は超微粒子の安全性にかんする膨大なる資料を送ってきた。

「ある種の超微粒子が健康に悪いことは知られている。ニューサイエンテイスト紙の報道では、炭素ナノチューブはネズミの肺に害を与えたという。一方、他の研究では、半導体の超微粒子はペトリ皿の上だけであるが、脳細胞の長寿化に貢献したという結果もでている。そこで、最も重要な事は、科学者は新素材について十分なるテストをすることである。

「ETCはナノテクとバイオテクとの間に境界線を設けている。「原子レベルで操作した器官」と呼んでいる。遺伝子操作反対活動家と話をする機会があったが、その際に、この問題の火付け役をした張本人が判明した。ETCが遺伝子操作反対の議論に便乗したと考えざるを得ない。

「ブラッセルを去るとき、筆者はETCの主張に一部は賛同しながらも、不安をいたずらに煽ったり、誤った偽情報を振りまくのには問題を感じた次第である。

さて、「老生」はナノテクは「悪玉」の役割をすることがあるとは全く知らなかった。それを知ってしまった今、読者に対して仮にアドバイスするとすれば、新技術に対しては目を見張って十分注意することである。放置しておけば、科学技術はどこかに向かって暴走する可能性があるからである。暴走の終点は地獄かも知れないのである。


前のページへ     次のページへ

〒435-0026      静岡県浜松市南区金折町733-2    TEL: 053-443-8450    FAX: 053-443-8491

© 2015 Uni-Vite JAPAN LTD, All rights reserved.