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#418 30/01/04

『キメラ』に関するQ&A

前号(#417)『キメラ』について書いた。この言葉は、専門家以外の人々にはあまり聞き慣れない言葉であろうかと考えた。弱っていたところが、同じ「ニューサイエンテイスト」紙に旨い具合にキメラに関するQ&Aのページを発見したので、それを紹介させて頂きたい。

Q-1: 「キメラ」とは何なのですか?

Q-2: 二つの別々の個体の細胞から作った生物です。同種間でも異種間でもそう呼びます。最も有名かつ悪名高いのは「ギープ」つまり、半分ヤギで、半分ヒツジというもので、これは既に10年以上前にカリフォルニア大学デイビス校で生まれた人工の動物です。これはヤギの胎児とヒツジの胎児を合体させたもので、その結果として生まれたものは、羊毛がありながらヤギの毛も生えていました。その他にもヤギとヒツジの特徴をそれぞれ持っていました。前号で取り上げたイスマイル・ザンジャニ博士のヒトとヒツジのキメラは通常のヒツジのように見えました。その理由は、ヒツジの妊娠期間中にヒトの細胞を半分だけ注入したからです。

Q-2: では何故拒絶反応が起こらなかったのでしょうか?

A- 2: キメラは免疫システムが出来上がる前に出来たからです。そうすると免疫システムが異なった種の細胞でも「自分の細胞」と認識してしまうのです。

Q-3: キメラは自然発生するものでしょうか?

A-3: そうです、私たち自身も知らないうちにキメラになっている可能性はあります。

例えば、二卵性双生児の場合は母親の子宮のなかで半分男性で、半分女性の胎児が育っていることがあります。 胎児の細胞は母親とコロニー化していることもあります。母親から胎児へ、また胎児から母親へ、というコロニー化があります。さらに、似たような現象としてモザイク化という現象もあります。これは遺伝構成が異なる細胞からなる単一個体のことです。遺伝子の変化の結果と考えられています。

Q-4: どういう目的でキメラをつくるのでしょうか?

A- 4: 研究的にはキメラを作り始めてから何十年も経ちます。発生の基本原理の研究がその目的で、遺伝子の異なる細胞が、その後に辿る道筋を究明するためです。例えば、ニワトリとウズラのキメラが多く使われてきています。筋肉がどのようにして形成されるか、脳の中の配線がどのように作られるか、などの研究に関して非常に役に立っています。このような研究において、ウズラの胎児の細胞がニワトリの胎児にどのようにして移るか、などが明らかになっています。同様な研究がヒトの細胞をネズミに移植する実験として行われてきています。

さて、「老生」の感想であるが、かかる研究は科学の発展とためには、おそらく欠かせないものであろう。不気味ではあるが、とりあえずは、そういう意味で是認しておくこととする。すべて、この世の出来事が悪意のないユートピアであるという前提では是認するという意味であることは言うまでもない。

ところが、現実のこの世には悪人もいる。第二次世界大戦中のヒトラーの優生学をベースとした悪の試み。さらには、このサイト#277に取り上げたイタリアの頭の狂った金儲け主義の医師、アンテイノーリのように、クローン・ベービーを実行しようとする輩までいる。

「老生」とて、不妊の夫婦が自分たちの子供を欲しがる理由に対して、理解を示さないわけではない。それは痛いほど良くわかる。ただし、安全性が未確認な手法に頼ってまで自分の子供を作るのは大いに疑問だといっているだけである。

目的さえ正当性があれば手段は問わない、というのは人間の歴史に何千回何万回繰り返された過ちであると言っているだけである。ましてやアンテイノーリのクローン・ベービーなどは、全く論外であろう。かの有名なドーリー羊はもはやこの世にいない。その他のクローン動物の寿命が異常に短いということも多くの人々の知るところである。

科学の名のもとに行われる拝金主義、アンテイノーリなどに騙されて、将来に問題児を抱えるか、あるいは避けて通るか、これは読者の、読者のみが決定できることである。


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