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#372 09/07/03

天災と人災を忘れるには一体どれだけの時間が必要なのだろうか?

天災にせよ人災にせよ、そういった災害を忘れるにはどれだけの時間が必要なのだろうか?人間という動物はどうやら一番新しい災害さえもすぐ忘れてしまう動物のようである。2003年6月22日付けの英文読売新聞に富士山の噴火の可能性に記事があった。

どうやらあの富士山が噴火する可能性がある由である。誰でもそのことは知識としては知っているが、毎日の生活の中では、そんなことは忘れている。ともかく、まず新聞記事を引用しよう。

「富士山が噴火した場合に起こりえる災害について研究する政府の研究チームによれば、頂上から流れる火砕流はあらゆる方向に流れる、ということが6月21日に読売新聞に対して明らかになった。

「この予測は『富士山ハザード・マップ研究委員会』の最終報告にまとめられるが、このハザード・マップには噴火による災害の程度が示される。

「この委員会の座長を勤める東京大学名誉教授アラマキ・シゲオ氏は間もなく報告書の原案を公表するが、同報告書には、この高度3,776メートルの山の周辺に住む市民や政府関係者の意見が盛り込まれる予定である。

「山頂から各方向に流れ出る火砕流による被害に加えて、噴火後3時間以内に周辺地域に及ぶ溶岩流による被害の最悪のケースをカテゴリー別に予測している。

「同報告書では噴火直後の周辺住民への優先退避地図を含んでいる。今年夏に提出される報告書には、特に山頂近くの住民に対して提供されることになっている。

「この最終報告書は昨年6月に提出された溶岩流による被害に関する中間報告をベースとして作られたものであり、最悪のシナリオとしては、噴火後1週間以内に溶岩流が東海道新幹線にまで達すると予測されている。遠く江戸まで灰を降らせた1707年の宝永噴火と同等の規模で噴火した場合の被害総額はおよそ2兆円に達すると見積もられている。

「富士山の麓に住む住民の大半は頂上から10キロメートル以上離れているため、噴火直後に被害が及ぶことはない、と静岡県災害予防センターの職員の一人は語っている。『しかし、登山施設やサンマーハウスなどは噴火による直接被害があり得る危険ゾーンにあるため、十分な必要』と注意を呼びかけている。

さて、歴史上、富士山が最後に噴火したのは1707年である。ということはおよそ300年前のことである。火山学者や防災に直接関係する人々を除けば、大多数の一般人にとっては、富士山の噴火可能性についてはあくまで『知識としての可能性』であり、実感には乏しいというのが実体であろう。

『多田野年頼』を含む多くの人々にとって、富士山と言えば、どっしりとして不動なものの象徴である。わずか300年前に噴火した事実を知っているにも係わらず、これはかなり多くの人々の実感であろう。300年という期間はとても短いと同時に、とても長い期間でもある。少なくとも歴史的事実を忘れ去るには十分な永さのようである。

とすると、戦後およそ60年という期間は、我々にとっては、宝永噴火よりは忘れるのに都合の良い時間ではないだろうか?先の大戦がいかにして起こったか、いかに多くの人々に困苦を与えたか、そして、それからいかにして生き延びたか、などは大多数の人々にとって既に風化してしまったものではなかろうか?

富士山噴火のような天災を予防することは不可能である。しかし、戦争のような人災は、我々が忘れさえしなければ予防可能である。そこにこそ歴史の大切さがある。


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