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#354 17/02/03

製造禁止の土壌中に農薬が何年も残留

英国の科学雑誌「ニューサイエンテイスト」の2月8日号が届いた。その12ページにエマ・ヤングという同誌の記者の署名記事がある。先ずは、その記事の紹介を下記する次第:

「謎に満ちた高濃度のDDTの長期地中残留について、ごくありふれた防カビ剤が犯人である可能性が高まっている。それも、もはや数十年も農薬使用が禁止されている土壌においての話である。

「1940年代に導入されたDDTの使用禁止は1970年代に広くひろまった。動物に対しての有害性に関する研究が更に進歩した結果である。DDTはホルモン分泌を撹乱し、出生率を低下させ、また鳥類の卵の殻を薄くする。大いに議論沸騰中だが、マラリアの多い国々では現在も使用が許されているのが実情。

「DDTが地中に沁み込むと、普通は地中のバクテリアによって分解され、DDEやDDDといった物質に変化する。研究によれば、スピードこそ遅いものの、分解はなされる。DDT散布20年後の土壌中残留量は二十分の一にまで減る。DDEも同様である。しかし、場所によっては過去30年間一切農薬を使用していないにも関わらず、DDT残留レベルが今だに驚くほど高い所もある。

「ニュージーランドのハミルトン市にあるワイカト大学のサリー・ゴウ率いる研究チームは、オークランド市近郊の農園13箇所の土壌を採取してDDT残留濃度を分析した。そのうち6箇所では濃度が予想以上に高かった。ニュージーランドにはDDTレベルについてのガイドラインがない。しかし、ゴウのチームが採取した土壌サンプルの中で最も濃度が高かったのは、1キロの土壌当たりに24.4ミリグラムのDDTが検出された。これはアメリカの環境保護局(EPA)が定めた最大許容量の4倍である。

「更に汚染土壌サンプルの分析を進めた結果、銅成分の含有量が多いことも発見された。これは恐らく普通にカビ防止剤として使用されている農薬のためであると考えられる。ゴウの考えるところでは、銅とDDTの高濃度残留には関連性があると言う。

「『その関連性を発見したとき全く驚いたものです。カナダやオーストラリアの研究者が土壌中の高レベルのDDT残留量について発表していましたが、銅レベルについては調べなかったため、この両者の関連には気がつかなかったのでしょう』とゴウは話している。

「これまでの研究で、銅は土壌中の微生物を殺すことは判明していた。ゴウの言では、DDTを分解するバクテリアがそれ自身犠牲者になっている可能性が高い由。ゴウとその研究チームが報告したDDT残留量レベルは、それ自体で動物に影響が出るほど高い。オーストラリア最大のCSIROという『土壌と水質管理機関』のライ・クーカナは、『野生生物に対する影響という観点からも不安の種です』と語っている。

「銅含有のカビ防止剤はEUでは既に2002年から使用禁止になっている。土壌中のバクテリアに有害であるという理由からであるが、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドでは広く使用されている。

私はこの記事の最後の部分で使われているアンダーラインを引いた『Oused』という単語は知らなかった。初めてお目にかかる単語である。研究社の英日辞典を引いてみた。これは厚みおよそ10センチ近い大辞典である。しかし、そこにはこの単語がないではないか。手持ちのあらゆる辞書を動員してもやはり発見できない。辞書の中で、アルファベット順にある近い単語は『ouste 』あるいは『oust』である。そこでまたロングマン英英辞典でこれらの単語を調べてみた。いずれも文脈とは合わない。

文脈からすると、この単語の意味に否定的意味合いはなく、肯定的意味合いがあると断定しても差し支えはあるまい。そこで取り敢えずは上記のように『使用されている』と訳した次第である。ネイテイブではない「老生」に分かる筈がないではないか。この記事の著者エマ・ヤングに連絡してみようか?

ニューサイエンテイストの出版社によるミスプリントという線はあろうか?先ずその線は考えられない。従って、『手の打ちようがない』状態である。「老生」は言語学者でもないので、このように希にしか使用されない単語の意味にはあまり興味はない。ただ、著者が真に言わんとするところが知りたいだけである。

それにしても、レイチェル・カーソン女史が、今や世界的に有名な著書『沈黙の春』を初出版したのは1960年代である。初出から40年以上経過している。日本語の翻訳の初出は1970年代である。そこで、例えば、1960年という年を考えてみると、『多田野年頼』または『唯の年寄り』は若干25才の青年であった訳である。好青年であったか?不細工かつ無作法な若造であったか?それは他人様が考えることである。そして、カーソンが世界を変えた本を執筆時に25才であった男が今自分を「老生」と呼んでいる。「老生」はきたる3月の始めには68才になるのである。

そのレイチェル・カーソンが世界で初めて化学合成物質の危険性を指摘した40数年後の現在でもDDTは動物や人間に脅威を与え続けているのである。遺伝子操作などが同じ轍を踏まないことを切に祈る老人である。


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