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#342 28/11/02

Eコマースと投資家の蜜月関係は終焉なのか?

今年10月のある日、「老生」の経営する会社の従業員の一人が社長室を訪れた。彼は言った、『社長、そろそろわが社でもEビジネスあるいはEコマースを実行すべきだと思います』彼はインターネット・ビジネス信者の一人で、ネットなしの会社に比べて、ネットを中心とした会社にまるで奇跡をもたらすと心から信じている男である。『Eビジネスに背中を向ける会社はいずれマーケットから叩き出されます』とも言う。

しかし、「老生」にとってはどうしてもEビジネスと呼ぼうがEコマースと呼ぼうが、いずれにしても砂上の楼閣のような感じがしてならないのである。そこで『もう少し待って、様子を見ようではないか』と返事した。なぜそのように強い否定のニュアンスで答えたのか、「老生」自身でも論理的には説明不能である。何か直感のようなものが、しきりと「老生」に『この案件は十分注意せよ』と告げているのである。

翌日、この従業員が再度訪れて、彼が何ゆえに自分のアイデアに固執するのか細かく説明した。要するに、彼はP/Cのシステム・エンジニアであって、わが社向けの特注のプログラムを作れる、というのである。「老生」にはP/Cのシステムは概念としては理解できるが、システム、システムと騒ぐ部分はどうもよく分からない。そこでその従業員に対して「老生」は言った。『君の言わんとする理屈は分かったが、君が言うそのシステムをわが社向けに作ったとして、一体君はどんな商品を販売することを考えているのかね?』すると彼は『それは私には分かりません。それは社長が考えるべきことです』と言った。

古いタイプの経営者である「老生」は言い返した。『いま流行のインターネット・ビジネスでも、ビジネスには変わりはない。やるべき事はわれわれの顧客の全てに対して最大の満足を与えることこそわれわれの仕事だ。新しいシステムがあろうとなかろうと、C/S(顧客満足度)がなければ全く意味がない。その点では、君の提案は意味がない』と言ってしまった。

その従業員は不満そうな顔をしながら静かに自席に戻ったが、心の中では『なんだこの頭の古い馬鹿爺め!』と叫んでいるのが聞こえるようであった。そこで「老生」も早速インターネット販売の最新事情を勉強すべく例によってアマゾン・ドットコムの最近の売れ筋書籍を洗ってみた。出てきたのは『消費者のルール』というロジャー・ブラックウエル著、ニューヨークで昨年(2001年)発行の書籍である。副題として『Eコマースと投資家の蜜月関係が終焉した理由』である。早速同書を注文して入手、大至急で読了した。結果としてはうれしいことに、『古狐は若いコンピューター・フリークより勝っていたのだ』著者の意見では、EコマースのEの部分に皆が振り回されたということで、むしろ古くから行われてきたコマースの部分こそ重要である、というのである。全く「老生」が直感的に感じていたことである。そこで同書の1から2ページに著者が書いていることを紹介しよう:

「今現在、消費者向けのインターネット販売で一山当てたいと思っている若者はシリコン・バレーからインドのバンガロールまで山のようにいるが、一時熱狂したベンチュアー・キャピタル(VC)、つまり、アマゾン・ドットコム、プライスライン・ドットコム、ザグローブ・ドットコム、インテルなどの創業に手を貸したVCは、いまそれらの提案の受け入れがなくなっている。

「その理由は何故か?彼らのアイデアが悪いからではない。VCがようやくインターネット・ビジネスの本質を見抜いてしまったからである。つまり消費者むけ販売には、経験豊かなマネジメント、実体のある設備、効率的な宅配システム、収益力、などなどの現実の世界に根を下ろした実質的ビジネス能力がないプランは成功しないというネット・ビジネスの本質の事である。このことは、ネット・ビジネスがスタートした時点から著者たちには分かっていた。30年以上にわたる消費者行動および10年のロジステイックス(物流)の研究から分かっていたのである。そして、このことは何も最終消費者向けのネット販売(B-to-C)に限って言えるだけでなく、ビジネス顧客向けネット・販売(B-to-B)の大多数についても同様である。

「簡単に言えば、アメリカのネット・ビジネスに対する情熱は急激に冷め、テクノロジーを過信した投資家たちは『えらい事をしてしまった!』と口をそろえる。

「過去数年の間に、数百の新しいネット・ビジネスが創業し、株式を公開し、当初はウオール街で大きな成功をみせたが、しかし、初めに約束した売上げや収益を実現した企業はほとんどゼロである。例外はeベイだけである。Eベイの成功は、「消費者が全てを決める」というビジネスの原則に従ったからであり、その急成長の一つは、これまでどの流通業者も試みたことのないやり方で消費者の購買上の諸問題を解決したからである。こうしてカスタマーを確保して収益を上げたのである。それに並ぶようなネット・ビジネスを展開した企業は他にあるだろうか?

これこそ「老生」が恐れたことである。当社としても、ネット・ビジネスをもし展開するとすれば、この著者の指摘する問題点について、現在取り扱っている製品、将来取り扱うやも知れぬ製品の全てについて総点検をせざるを得ない。

製品のソーシング、配送、輸送コスト、などを含めたフルフィルメントと称される消費者あるいは顧客側から見た『満足度』である。それが可能か否かの検討が先で、社員の提案したネット・ビジネスのプログラムは、その気になればいつでも出来るので、この際は後回しである。


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