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#212 17/11/00

強烈なる生命力の肝臓なる臓器

毎度のことで恐縮ながら、「老生」が購読する英国の科学雑誌「ニューサイエンテイスト」の2264号(11月11日付)にまたまた興味ある記事を発見した。これは肝臓に関する記事である。確かこのページの6号(98年7月6日付)にタイムス紙か別の新聞記事を引用したと記憶している。ともかく科学雑誌の記事を下記に引用する。

「健康な肝臓細胞の代謝回転は決して速くはない。ところが、毒性物質や外科手術による一部切除などの非常事態が起こると、再生能力は驚異的に早くなる。DNA合成は24時間以内にスピードアップして、残った肝臓の重量は3日で2倍になる。そして、およそ2週間で元の形まで再生される。この再生能力には限界が見られないようである。1950年代にすでにしてこのプロメテウス的(画期的)実験がネズミに対して行われ、肝臓の一部を毎月切除しても、少なくとも1年間は生き長らえることが判明していたのである。最終的に再生される肝臓がほんの一部でも元の肝細胞を含んでいればという条件付ではあるが、ともかく正常な肝臓が再生されるのである。

「なぜこうなるかという、その機序については長い間不明であった。仮説の一つは、肝細胞の減少そのものが、肝細胞成長因子を活性化させて、修復プロセスを発動させるというものであった。また、別の仮説もあり、それは、増殖は通常増殖抑制因子によって常に監視されていて正常値に抑えられているが、ある条件が発生した場合に、増殖プロセスが発動する、というものであった。最近の分子レベルでの研究によれば、上記二つの仮説はそれぞれ正しく、肝臓の再生メカニズムには双方が必要と説明されるようになった。増殖因子は明らかに存在するのである。

「最も重要な点は、肝細胞成長因子が肝細胞に必須のもので、これがなければ再生の引き金が引かれないと考えられている。他の増殖細胞、即ちTGFα(トランスフォーミング増殖因子)のレベルが、肝臓が損傷を受けた場合に10倍にアップするが、そのピークはDNA合成と時を同じくするのである。しかし、他の各種増殖因子及び、例えばインスリンやノルアドレナリンのようなホルモン類も、この反応と無関係ではなく、重要な影響力を持っている。

「何事についてもそうであるが、良いことはいつまでも続かないもので、この肝細胞増殖にも限界があり、いつかは終わりがくる。他の体組織の増殖因子ではあるが肝臓にとっては増殖抑止の働きをするTGFβがブレーキをかけるのである。これが損傷の24時間後にレベルアップして、肝臓再生化反応が完了するまで活性化し続けるのである。面白いことに、TGFβの発現は肝臓が健康な場合には低レベルで行われる。おそらく増殖因子の活性化レベルが低い場合にその調整役をしていると思われる。

「こういった新しい肝臓再生化の機序への理解は、いずれ近い将来に肝硬変や外科手術にあたっての肝臓治療法の新しい道を開くであろう。

さて、「老生」の感想であるが、この肝臓という臓器の増殖スピードの速さは眞に目を見張るものである。今年の始め「老生」は主治医による定期健康検査を受けた。結果は満足なものであった。「老生」の肝臓はいたって順調に働いているらしい。毎日の相当量の飲酒にもかかわらず、である。

「老生」の肝臓は化け物だと主治医は言う。そして、「老生」自身もそう思う。その意味では、「老生」は両親に感謝すべきであろう。もちろん、そのアルコール分解能力が、父親側から頂いたのか母親側から頂いたのかは「老生」には知る術もないが。

肝硬変は呑み助が心配する事柄の一つである。しかし、「老生」の主治医はどうやら、それだけは心配する必要がないと言う。アルコールに対しては『免疫』がある様子。それだけでも「老生」としては両親に感謝すべきであろう。

普通の人々の、肝臓に異変が起こった場合のDNA合成能力が、異変発生後24時間にアップするなら、「老生」の場合は12時間と考えても良いのではないだろうか?こういうことを言うと、現在肝臓病でお困りの人々からお叱りを受けそうであるが仕方がない。ただ、「老生」が『臓器提供意思表示カード』を常に携帯していることは読者にお知らせしたい。


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