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#209 27/10/00

試験管ベビーの弟からの骨髄移植に成功

10月20日付けの英文読売新聞にミネアポリス発の驚くべきニュースが報道されている。先ずはその記事の一部の引用から始めよう:

「2000年10月18日に医師が発表したところでは、オーダ−メードで生まれた弟の臍帯血移植を受けた6才のファンコニー貧血(先天性再生不良性貧血)の少女が回復を示した。少女の名前はモリー・ナッシュという。

「この少女は、遺伝的問題で骨髄が作れないというファンコニー貧血に悩まされていた。骨髄の移植をしなければ、この病気によって、少女はせいぜい35才までしか生きられない。もちろんさらに10年、あるいは20年も短命に終わる可能性もある。

「移植手術の3週間後のチェックではうまくいっていると思われた。そしてモリーは間もなく退院できる見通し、とミネソタ大学のジョン・ワグナー博士は言う。注入された細胞がモリーの骨髄に取って代わって機能しているのである。そして、血小板を作り、同時に病気と闘う戦闘部隊としての白血球を作っているのである。ワグナー博士は言う、『骨髄移植片の回復が極めて順調に進んでいます。だからこれは成功です』と。

「臍帯血は弟のアダムから貰ったものである。アダムは試験管ベビーで、今年の8月末に生まれた。生まれる前に両親は先ず、遺伝子的にスクリーニングを行って胎芽一つを選んだ。その目的はモリーの病気の遺伝子がなく、またドナーの体組織と拒絶反応をしないことを確認することであった。

「これは、姉妹の命を救うために遺伝子的に選ばれて子供を誕生させたケースとして、世間に知られた最初のケースである。モリーの回復速さは両親を狂喜させた。ワグナー博士の言では、モリーの退院は1週間以内とのこと。また退院後も医師団がその後2ケ月は綿密にモリーを観察することになっている。医師の一人によれば、モリーの頭上の暗雲は完全に晴れたとは言えないが、通常の生活に戻れるチャンスは非常に大きいと言う。

「ワグナー博士は、このモリーの成功が、ヒトの胎芽についての研究の是非についての議論に好影響をあたえ、研究予算が増えることを願っていると言う。同博士は『胎芽の研究は人々に真の利益をもたらすもので、今回の成功はその一例に過ぎません』と言う。

「この話題については目下大議論が起こっている。と言うのは、女性の子宮に移植される受精卵以外は凍結保存するか、あるいは死なせるか、という問題があるからである。ローマ法王ジョン・ポール2世は、使用されなかった受精卵の廃棄について反対する立場を取っている。

「ナッシュ家のケースでは、医師団はモリーの母親の卵子12ケを受胎させた。そしてそのうち10ケの胎芽をテストして、最後に一つを選び出した。それがアダムになり姉の命を救うことになる。モリーの母親によると、ファンコニー貧血の遺伝子を持つことが発見された一つの受精卵を除いて、残りは凍結保存されている由。

前に記したように、これは確かに議論を呼ぶことは間違いない。この手の技術は安易に使われてはならないと「老生」は思う。しかし、重要なポイントの一つは、この技術によって少なくとも一人の少女の命が救われた事実である。ローマ法王はこの技術に反対の様子である。それはそれで理解できる。

しかし、法王は『モリーの命は放っておけ』と明確に言ったのであろうか?それはありそうにない。「老生」としては、法王の真意を知りたいものである。

(注)ファンコニー貧血:先天性再生不良性貧血。常染色体性劣性遺伝と考えられているが、単発例も多い。貧血の発症は4−6才が多い。(南山堂医学大辞典より)


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