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#207 20/10/00

抗体の反逆

この前の拙文(#206、10月16日)にも引用した英国の「ニューサイエンテイスト#2259(10月7日付)の11ページにすこぶる奇妙な記事を発見した。それは抗体にはこれまで発見されなかった破壊能力が備わっている可能性があるというものである。

たまたま「老生」が持っている"Encyclopedia of Medicine" by American Medical Associationによると、『抗体とはタンパク質の一つで、体内に侵入した抗原(異物)を無害化するために、リンパ球によって生産されるものである。バクテリア、ウイルス、その他の微生物は多くの抗原を持っている』と書かれている。従って、本来、人体を守る役目を持っているはずである。とすると、「老生」が拙文(#206)に書いたマクロファージの裏切りと同じではないか。

そこでこの抗体の反乱についての記事を以下に紹介する次第。『抗体は従来考えられた以上に、病気を防ぐ、と同時に病気を引き起こすための、役割を持っているかも知れない。尖兵というよりは、むしろ偵察隊と考えられてきた。免疫学者が従来信じてきたのは、抗体は異物即ちウイルスやタンパク質に取り付いて捕まえるが、それら異物を殺すのは免疫システムの他の部分(例えばマクロファージ)である』

「カリフォルニアのラホーヤにあるスクリップス研究所のウェンワース、ジャンダのチームが抗体の研究をしていたとき、彼らが発見したのは、ある抗体が過酸化水素を産出するということであった。そしてその過酸化水素が細胞やウイルスを破壊するのである。チームは他の39種類の抗体をチェックした。マウス、ネズミ、ウサギ、羊、山羊、馬、そしてヒトも含まれていた。結果はすべてが過酸化水素を産出した。ウエンワース氏は言う、『抗体にこのような能力があるとは全く考えていませんでした』と。

「さらなるテストで発見されたのは、抗体が一重項酸素を活性の強いタイプに変える、即ち過酸化水素である。驚くべきことは、白血球が侵入した微生物に対して、過酸化水素とその他の関連化学物質をスプレーする時に副産物として一重項酸素として生産される、ということである。

「このことが示すのは、抗体は酸素を過酸化水素にリサイクルすることによって、その攻撃力を増していると考えられることである。しかし、このことはまた、免疫細胞の過剰な活動によって、例えば自己免疫疾患のような問題を悪化させることを意味する。

「コロンビア大学の免疫研究者ドナルド・ランドリー氏によると、『これは眞に驚くべきことである』と言う。同氏によれば、抗体が二重の役割を担っているとは全く期待されていなかった。進化の過程でできた精妙な免疫システムであるとのこと。

さて、過酸化水素であるが、前述の医学エンサイクロペデイアによれば、医学辞典であるから当然ではあるが、次のように書かれている。『過酸化水素は殺菌力のある溶液であり、皮膚、口中の感染の消毒に使われる。また毛髪の漂白にも使われる。皮膚と口中に存在する酵素であるカタラーゼと結合し酸素を発生させる。それがバクテリアを殺し、患部を清潔にする。時として、痛みが伴うことがある』

一方、「老生」の記憶では、9月の終わり近く、過酸化水素を満載したタンク・ローリーが爆発した事故があった。30名前後の人々が重軽傷を受けた。また確か過酸化水素はロケットの燃料としても使用される筈である。いずれにしても危険物である。


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