日本語     English

#206 16/10/00

人体防衛軍が裏切り(バイオクーデタ)をするのか?

何度も引用するので少々気が引けるが、英国の科学雑誌「ニューサイエンテイスト」#2259が届いた。10月7日号である(ページ7)。そこに大いに気になる記事がある。人体を守る役目の免疫細胞が『裏切り』を働いて殺人者に変身する可能性があるというのである。その一部を「老生」に引用させて頂きたい。

「白血球の中には悪いやつがいて、これらがウイルスに感染すると一連の重篤なる病気の原因になる、と米国の科学者が発表したとのことである。つまり、体内に入った細菌などの異物や老廃物を捕食消化するマクロファージの裏切りであるが、AIDS, ガン、早発性痴呆症、さらには心臓病などに関係すると研究者は言う。10月末に予定された学会でその証拠を示すことになっている。

「免疫学者の中にはこの理論はありそうなことと考えるひともいる。しかし、本誌が接触した専門家の中には、会議でその『証拠』なるものを見ないうちは判断を保留するというひともいる。

「マクロファージは免疫システムの中の『尖兵』である。その仕事は侵入者を飲み込む形で殺すことである。マデイソンにあるSLILバイオケミカル社を設立したステイーブ・マクグレースとブライアン・ハーダーは、マクロファージは潜んでいたウイルスに感染した場合に、突然凶暴化するという説を唱える。これらウイルスは感染させた細胞に自分の遺伝子を挿入する。

「研究者の発見によれば、マクロファージが暴走するのは、ウイルスのDNAが特定の遺伝子に遭遇した場合にのみ起こる由である。『遺伝子挿入には規則性はありません。ウイルスの挿入はその99%は問題を引き起こしません』とSLIL社の責任者のピーター・モロイ氏は言う。『ただし、ウイルスのDNAが遺伝子に侵入した場合(われわれはそれを確認しています)には病気に至る連鎖反応が発生します』とモロイ氏は言う。

「マクグレースおよびハーダー両氏がこの発見をしたのは、AIDS関連のリンパ腫 − これは患者を悪性のHIVにする血液ガンの一種である − の研究をしている時であった。腫瘍の細胞の中に居座った異常なマクロファージを発見した。通常の腫瘍と異なり、これらの増殖のスピードが異常に速いのであった。そこで彼らはこのマクロファージに対してプロマック(ProMacs =proliferating macrophage) という名前を付けたのである。

「さらに彼らが発見したのは、HIVはそのDNAをc-fesと呼ばれる、それが破壊された場合にガンを引き起こすある種の遺伝子の中に詰め込むことであった。モロイ氏が言うには、この詰め込まれたDNAが腫瘍遺伝子を活性化するときに、マクロファージは増殖し、成長因子を生産するとのことである。彼らの考えでは、この成長因子がリンパ球と呼ばれる、近辺に存在する白血球を増殖に駆り立て、リンパ腫と呼ばれる腫瘍を形成させるとの事である。

「その後の研究室内のテストでは『プロマック』は、HIV陰性でありながら動脈硬化症や早発性痴呆症の患者の白血球にも発見されているとのことである。例えば、このことから、この悪性化したマクロファージが健康な脳細胞を殺している可能性があると言う。

「モロイ氏の考えでは、『プロマック』によって大量に、また急速に生産された物質が、周辺の細胞の成長を加速し、ガンを引き起こすか、早発性痴呆症の場合は組織を破壊しているとのことである。

「一方、オックスフォード大学のマクロファージ専門家であるサイモン・ゴードン氏によれば、ある種のガンは、腫瘍細胞を攻撃するのではなく、むしろ防御するためにマクロファージを『堕落させる』ことが知られているという。しかし、『プロマック』が、脳であれ血管内壁であれ、なぜ病変部位に集まるのかが解明されていないという。

さて、そこで「老生」は手持ちのオックスフォード・コンサイス・医学辞典を開いてみた。まず、マクロファージであるが、辞典の定義では、『大きなスカベンジャー細胞で、結合組織、重要内臓器官、一般体組織、骨髄、脾臓、リンパ腺、肝臓、及びホルテガ細胞などに主として存在する。これらは単球と密接な関係がある』とある。

「老生」にはこの『単球』なるものについての知識はない。そこで同辞典を再度引いてみた。辞典は言う『単球とは白血球の一部で直径16から20?であり、形状は腎臓の形をした核である。灰色がかった青色の細胞質である。その機能はバクテリアや体組織のかすを捕食することである』となっている。もしも、上記の研究者が発見した事が事実とするならば、これは全く祖国を守るべき兵士の祖国に対する反乱である。あるいは『生化学的クーデター』と呼んでも良いのではないか?


前のページへ     次のページへ

〒435-0026      静岡県浜松市南区金折町733-2    TEL: 053-443-8450    FAX: 053-443-8491

© 2015 Uni-Vite JAPAN LTD, All rights reserved.