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#204 04/10/00

変幻自在なHIVウイルスの恐ろしさ

「老生」は昨日(9月3日)英国の「ニューサイエンテイスト」9月30日付号#2258に基づいて己のホームページ#203を書いた。その同じ号にHIVについての恐ろしくも科学的には興味深い記事を発見した。その記事が伝える新発見について先ず紹介したい。

「薬物耐性を身につけたHIVウイルスの株は、特定の薬物に対しては『終身免疫性』を獲得したように思われることを英国の科学者グループが発見した。その新発見は、悪いニュースではあるが、ウイルス性の耐性が減退させることによって、薬物耐性を獲得したHIVウイルスと戦えるという希望を粉砕するものである。

「英国公衆衛生サービス局の中のバーミンガムにある『対ウイルス・チーム』の研究者が、HIVウイルスの突然変異追及の研究から発見したのが、薬物療法をすでに受けた550名の患者に投与した各種薬物に対するウイルスに耐性を与える変異である。薬物療法で効果がなかった患者の血液中には、非常に高い割合で薬物耐性を持ったウイルスが検出されている。ただし、薬物を変更した患者の場合は、最初の薬物耐性ウイルス株は消えているように思われた由である。

「そこで研究者たちは、再び最初の薬剤を投与したら何が起こるかを試してみた。結果は、最初の薬物耐性ウイルスがただ戻ってきただけでなく、その復帰スピードが速く、しかもそのレベルが増加して戻ってきたとの事。研究者の一人は言う、『ひとたび薬物耐性変異を獲得したウイルスに感染したら、もはや一生それらから逃れる術はありません。ある種の薬物類では、いくら手を変え品を変えて変更しても、まったく効果がないでしょう』と。また、彼の意見では、これら薬物耐性ウイルスは低レベルで、患者が同じ薬物を再び使用した場合に即時戻る準備を整えてリンパ節に隠れ潜んでいるとの事である。

「HIVに関する以前の研究では、少なくても研究室レベルでは、薬物耐性ウイルス株の増殖は、変異以前の野生株より少なかった。従って、研究者の今後の優先すべき課題としては、薬物耐性ウイルス株を持ってしまった患者の病気の進行速度が、そうでない患者より速いか遅いかを調べることである。研究者の一人は言う、『まだわれわれには、病気の進行プロセスが分かっていません。薬物耐性ウイルス株の方が野生株より悪性度合いが少ないかも知れません』

「研究者たちは、HIVウイルスに感染した直後の患者が持つウイルスのDNAシーケンスを調べた。目的はウイルスに薬物耐性を持たせる突然変異を探す事であった。過去の調査では、28名の患者の中で8名は、少なくとも1種類の薬物に対して耐性を獲得したウイルスであった。一方、1994年から1998年の調査では、36名の患者の中で同様な患者は2名であった。色々なウイルス株の中には、現在使用可能なほとんどの薬物に対して耐性を持った株も発見されている。

さて、この記事は実に恐ろしい。「老生」は、HIVに真に有効な薬物は現在のところないと理解している。当然ながら素人の「老生」は現在HIV治療に使われている薬剤の数は知らない。そして、現実は、この記事にあるように、HIVウイルスはこういった薬剤それぞれに対する耐性を、一つ、また一つと獲得しているのである。

ウイルスの世代交代はきわめて早い。という事は、突然変異の出現も想像できぬほど早いと考えてよいであろう。これは言ってみれば、薬剤開発とウイルスの変異とのレースであろう。そして、ウイルスの世代交代スピードから考えて、いくら科学が目覚しい発達をしているといえども、人間の薬剤開発スピードにこのレースに勝ち目があるとはとても考えられない「老生」である。この考え方は悲観的過ぎるであろうか?

基本的には、ウイルスを引っ張り出したのはわれわれ人間が起こした環境破壊であると「老生」は認識している。つまり、どこか見えないところで密かに隠れて生きてきたウイルスを出現させたのはわれわれ人間なのである。言い換えるなら、『自業自得』ということか。


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