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#203 04/10/00

英国のミルク品質管理と雪印スキャンダル

6月終わり頃日本のミルク製品最大手の雪印乳業にスキャンダルが発生した。各地に多数ある同社の工場の中で多くの考えられない事柄が発覚してゆくが、特に北海道工場の製品からエンテロトキシンと呼ばれる黄色ブドウ球菌によって作られる毒素が検出された。検出量は製品1グラム当たり20ナノグラムであった。同社の幾つかの工場が操業停止に追い込まれ、同社としては1500名の従業員削減を計画中である。「老生」の目から見れば、このスキャンダルは従業員のミスというより、企業経営者のミスである。正しい品質管理システムの導入をしなかった罪であるからだ。

このミルク製造に関して、「老生」がいつも引用する英国の「ニューサイエンテイスト」誌に英国の事情を説明する記事を発見した。同誌の9月30日付け2258号である。その一部を下記に引用する次第:

「英国の公衆衛生サービス研究所(PHLS)の研究者によれば、全乳と比べて低脂肪牛乳のほうがサルモネラ菌や大腸菌による食中毒に罹る可能性が高いということである。

「大手スーパーなど向けに供給する大手の牛乳メーカーは近代的設備を備えているが、中小の牛乳メーカーは、スキムミルクが普及する以前に造られた殺菌設備を使っているところがほとんどである。ドーチェスターのPHLS研究者であるランプリング氏は言う,『古い設備では殺菌プロセスの中でミルクを分離するように設計してあるのです』と。

「今日の低脂肪ミルクの需要に応えるためには、これら中小メーカーは設備を改良してクリ−ムを分離するように改良されてはいるが、PHLSが中小2社を調査した結果、テストにパスしなかった由である。ミルクの流速を上げているため殺菌のための高温の場所への滞留時間が不十分であったとの事である。その結果として十分なる殺菌がされていなかったため、バクテリアが生き延びたという訳である。

「食品スタンダード局のスポークスマンは言う『昔は農場現場での殺菌の場合に問題があったことは事実です。しかし、われわれはこの問題を特に意識はしていませんでした』 付け加えてスポークスマンが言ったことは、殺菌が不十分なメーカーには操業停止命令を出すことにするしかないという事である。

「前述のPHLS研究者は言うには、問題は殺菌結果をチェックする方法とも絡んでいるとの事。テスト方法は、殺菌中に破壊されるホスファターゼという酵素が残留しているか否かで行う。しかし、このホスファターゼはミルク中の脂肪に付着する傾向がある。したがって、ミルク中のクリーム分即ち脂肪が、脱脂される際にホスファターゼ酵素をも取り除くことになる。ということは、殺菌が不十分であっても、低脂肪乳の場合は、ホスファターゼが検出されないから合格となる可能性があるということを意味する。

「この点を踏まえて、食品コンサルタントの一人は、『低脂肪ミルクの検査にはもっと精度の高いテスト・システムが必要です』と。PHLSの研究者も法律を改正して、低脂肪ミルクの品質検査には、より精度の高い検査システムを義務付ける必要を感じていると言う。食品コンサルタントもこの点には賛成であるが食品の安全を考える場合、精度の高い検査システムの義務化は何も低脂肪ミルクに限らず、すべてのミルクに導入すべきである、とさえ言う。

そこで再び冒頭に述べた雪印乳業の事件に戻る。新聞によれば同社の7月の販売は前年同月に比べて80%の低下(金額で240億円)したと報道されたが、「老生」の感覚では当然のことである。なにしろ、同社の工場の一つでは、賞味期限が切れた製品を回収して、それを再度リサイクルまで行った由。ここまでいくと、これはもう従業員のミスなどでは決してない。会社の経営方針として会社くるみの確信犯である。

経営陣の中から逮捕者がでて当然なぐらい悪質な犯罪である。1500名の従業員が失業するのもやむを得ない点もあるが、経営陣こそがより多くの血を流すべき、と「老生」は考える次第である。

上記の英国で問題とされているのは中小乳業者についてである。わが日本の雪印は少なくとも乳業業者としてわが国の最大手であろう。モラル低下もここまでくると絶望的ではないだろうか?


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