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#202 03/10/00

脳を筋肉に変える技術

英国の科学雑誌「ニューサイエンテイスト」誌2257号(9月23日付)が5分前に「老生」の手元に届けられた。その7ページに幹細胞に関する興味ある記事がある。その記事の一部を引用させて頂く:

「脳の幹細胞を筋肉に変えられることをイタリアの研究者チームが発見した。これは重要なことである。何故なら、そのような細胞は、たとえば筋ジストロフィー(筋萎縮症)などの治療に必要な材料を無限に供給してくれることになるからである。同研究者チームは、何が幹細胞を変化させる引き金になるのか、その機序のヒントを得たとも言う。

「イタリアのミラノにある国立神経研究所に所属するアンジェロ・ベスコビとその同僚たちは、ネズミの脳から採取した成長した幹細胞が、生きたネズミの筋肉に移植された場合に、筋肉になることを確認した。また、人間の場合でも、流産した胎児から採取したヒトの脳幹細胞を、ネズミの筋肉に移植すると、筋肉細胞に変化すると言う。同チームはさらに、ネズミの脳幹細胞が血液細胞に変化することも確認している。

「これまで、科学者は成長した幹細胞だけが・・・即ち、胚が胎児になり、各種器官が発達した後のもの・・・脳細胞、造血細胞、筋肉など元来それらが属していた組織から別の組織に変化しないと考えていた。アンジェロ・ベスコビの希望としては、成長した幹細胞も他のタイプの細胞に変化することを、自分の研究結果によって懐疑的な研究者にも納得させることである。かれは言う、「まだ最終的証拠とは言えないものの、私の研究が、少なくとも将来に対しての可能性を示していることにはせめて同意してもらいたいものです」と。

「ロンドンのUniversity Collegeで神経幹細胞の研究に携わるマーチン・ラフによれば、同様な結果を出している研究は山のようにあるという。また、体組織の細胞間変化に関わる研究は数が多く、ベスコビの研究結果は何ら驚くに当たらないと言う。「このような細胞の驚異的な柔軟性についての新発見はとても多い」と言う。

「このベスコビの最新の研究で判明した事の興味深いひとつは、脳細胞が変化するのは筋肉と接触している場合のみとのことである。ほんの数マイクロメートル離れていても駄目なのです。彼は、その変化の引き金となる化学物質が筋肉にあると睨んで、それを追求している。とすると、変化させる前には、脳細胞はそれぞれ離れていなければならないという事になる。さもないと、隣り合った脳細胞がお互いに影響しあって、筋肉細胞からのシグナルを受け取らないからである。

「ベスコビが言うのは、幹細胞は胚の時にすでに、いかなる細胞に将来なるのかがプログラムされているのではないか、ということである。しかし、この運命の不履行は、筋肉からの化学シグナルが十分に強い場合には帳消しにされるのではないか、と彼は言う。

「堕胎反対者たちは次のように主張する。即ち、ベスコビの今回の成功こそが、かれらが胚および胎児の研究禁止を求める理由であると。一方、ベスコビの反論は、ヒトの脳幹細胞を採取して増殖させることは現実には不可能ではないかと。唯一可能なことは流産した胎児のものである。また、彼は言う。ネズミと言えども、何年にもわたる幹細胞の実験の上にこれだけの結果が出たのであって、それがなければネズミの成長した脳幹細胞採取のために、大規模なネズミ農場を作ることさえ不可能であると。

何とも恐ろしい時代になった。というのが「老生」の正直な感想である。筋ジストロフィーなどに治療の道が開けるというのは、それはそれで素晴らしいことではあるが、脳細胞から作った筋肉は頭が良いのであろうか?幹細胞とは高齢者も持っているのであろうか?近く図書館で調べてみよう。

仮に、アルツハイマーの高齢者にも幹細胞があるとして、それを筋ジストロフィーの患者の筋肉に移植したとする。その場合、車いすを動かすだけの筋力をもった腕ができるのであろうか?SF的発想であるが、「老生」は否定的な見解しかもてない。


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