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#201 29/09/00

カポジ肉腫アフリカで広まる

ここに引用するのは、英国の科学雑誌「ニューサイエンテイスト」2256号(2000年9月16日付)の記事である。

「チンパンジーとゴリラには、ちょうどHIVに起こったように、種を飛び越えてヒトに伝染する可能性をもった、かっては知られていなかった複数のヘルペスウイルスが宿っている。これらウイルスはフランスの研究者によって発見されたものであるが、ヒトの場合にカポジ肉腫(赤道直下のアフリカ原住民には多発)と呼ばれる皮膚に腫瘍を起こす種類と非常に近い関係にある種類である。

「カポジ肉腫はエイズ(後天性免役不全症候群)の皮膚症状とされているが、中央アフリカでは風土病とされている。カポジウイルスと良く似たウイルスがマカーク猿から発見されている。そこでパリのパスツール研究所のアントワーヌ・ジェサンと、カメルーンとガボンの彼の同僚達は、ヒトと近い関係にある類人猿に関係するウイルスを探し始めた。チンパンジーに二種類、ゴリラに一種類が発見された。マカーク猿のウイルスと比較してジェサンは言う、『これらのウイルスはヒト・カポジウイルスと非常に似ている』と。

「この類似性の意味するところは、ジェサンの言では、もしもこれら類人猿のウイルスがヒトに感染するなら、これらウイルスによって病気になる。類人猿のウイルスが類人猿に病気を引き起こさないとしても、ヒト・カポジウイルスの保菌者のヒトに感染するとすれば、これら二つのウイルスは遺伝子を交換して、全く新しい極度に危険な病原体を作り出したということです、とバーミンガムにあるアラバマ大学のベアトリス・ハーンは言う。

「ウイルス学者達が心配するのは、この新しい類人猿ウイルスがヒトに感染する可能性が非常に高いという点である。西アフリカの熱帯雨林で林業が盛んになるにつれて、人々が動き回り、霊長類を含めたいわゆるブッシュミートの消費が増加する。

「ジェサンによれば、未発表ではあるがすでに完成している論文で、この新しいウイルスは既にヒトを感染していると思われる由。これはチンパンジー・ウイルスで、アフリカとアジアのマカーク猿のウイルスと非常に似ている。もしこのウイルスが既に猿や類人猿に広く広まっているとすれば、ヒトの間に広まっていない方がおかしいということになる。『探すしかありません』とジェサンは言う。

「ハーンもジェサンに同意見である。但し、ハーンの意見では、ジェサンがチンパンジーから発見したウイルスは、捕らえられている間に、マカーク猿から貰ってしまったウイルスである可能性があるので、要注意との事である。

2000年5月17日付で書いた拙文#175に、「老生」はブッシュミートの売買について、同年4月29日付ニューサイエンテイスト誌の記事に基づいて、『仲間を食う輩』と題して書いた事がある。それは毎年赤道アフリカ地域で林業労働者の蛋白質源として殺戮される、主として猿の肉は100万トンを超えるという事実である。仮に一匹が50kgとすると、100万トンにするには2万匹である。現在生息する猿類が1年に2万匹殺すとすると絶滅には何年掛かるのであろうか?

この新しいヒト・カポジ肉腫ウイルスの出現は、食われてしまう類人猿の恨みのこもった人類に対する復讐と考えられないであろうか?一年に100万トンの消滅を続けるとしたら、アフリカの類人猿(動物学的に難しい分類はこの際どうでもよい。要するに猿である)が絶滅に瀕するのも時間の問題であろう。腹を減らしたアフリカの林業労働者の食料は、勿論大切である。しかし、一方で、環境破壊をしながら他の種を殺して食うヒトなる種も大きな問題である。ヒトを選ぶか猿を選ぶか、真に重い問題である。


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