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#100 20/07/99

体外受精で妊娠の可能性を三倍高める方法

 以下に引用するのはタイムズ紙7月20日の記事である。男性の側に原因のある不妊についていくつか書いてきた「老人」にとって、女性の側に原因のある不妊についての記事は見逃せない記事である。例によって、先ずそのタイムズの記事の引用から始める。

 「計算とは不思議なものである。10万人を超える女性が、子供を欲しがっているにも拘わらず、卵子を自分で作れないのである。昨年度の統計によれば、1千人の女性がドナーから卵子を提供された。ということは、それでもまだ何万もの女性がウエイテイング・リストに長い行列を作って待っているという計算になる。いずれの女性も、統計的数字に逆らって、子供を産むには年をとり過ぎたと宣告される前に、貴重なる贈り物に預かろうと希望しているのである。

 「そこで、議論を呼ぶことは先刻承知で、数人の勇気ある医師が”卵子分け合い(egg-sharing)”なる技術を開発した。これによって卵子不足という手におえないジレンマが解決されることになるのである。その最先端を走るのがアフジア博士とサイモンズ博士で、共に産婦人科の専門家として、ロンドンのコモンウエルズ病院に勤務している。基本的アイデアが生まれたのは6年前に遡る。

しかもそのアイデアは患者から出たものである。女性患者達が、「お互いに助け合う」というアイデアを出したのだ。アフジャ博士が語る、”卵子を待つ患者がいる一方で、治療費を出し切れない患者もいるという事実でした”、と。

 「体外受精(IVF)処置には卵巣を刺激して卵子を10ケ程度作らせる処置が伴う。そして試験管内でその卵子に精子と合体させて受精させる訳である。ところが、法律的には、受精卵を子宮に戻す数に制限があり、上限三つまでとされている。10の卵子の内の三つだけが有効なのである。従って七つは余分になる訳である。そこで女性患者達が、自発的に、その「余り」を他のウエイテイング・リストに名を連ねるカップルに提供してはどうか、という提案をしたのである。そして、その代わりに、ドナーに対する治療費は無料にする、というアイデアである。受精卵冷凍の技術の先駆者であるアフジャ博士なので、自分ではかなり先進的と考えてはいたが、さすがにこの提案は少し行き過ぎではないかと思ったという。新聞に「卵子売ります」という見だしで叩かれることが、頭にすぐに浮かんだという。

 「今日でも、同博士の考えはあまり変わってはいない。英国内の六つのクリニックで、この方法ですでに双子を含む140名の子供が生まれている。現在進行形の妊娠が87名とのこと。卵子提供という行為が高貴なる自己犠牲であると信じる人々から卑しめの言葉を受けたにも拘わらず、この物静かな話し方をするアフジャ博士は、今ではようやく、この「卵子分け合い」の考え方を擁護する側に廻った様子である。この方式については、昨年公的機関からの認可が出ているにも拘わらず、人体の部分の販売は非倫理的として非難も多くあるとの事である。

 さて、この卵子分け合いが倫理に適うか否かという問題は、極めて答え難い問題である。人体の部品を販売するという側面だけを強調すれば、確かに非倫理的に見える部分もある。しかし、献血とか骨髄のドネーションと同様に考えるなら、不妊に悩む女性にとって大きな救いとなる事も間違いない。つまり、他のあらゆる事柄と同様に、この方法についての考え方は十人十色であろう。

 しかしながら、敢えて「老人」の意見を述べるなら、このページの#51にも書いたように、鳥取大学が開発した「動物による人間精子のトレーニング・スクール」と比較した場合、この方式は極めて「人間的」であり、ほのかな「ぬくもり」さえ感じる「老人」である。

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