日本語     English

#094 09/07/99

無精子症の治療=NHKクローズアップ現代(7月8日)

 昨日(7月8日)のNHKのTV番組「クローズアップ現代」を見た方は多いであろう。無精子症の男性の精子を、ネズミを使って作るという鳥取大学の実験の話題である。「老人」としては常々、遺伝子操作に係る事柄は問題視しているので、もちろんこれを見た。そして、参考になる追加情報は得たものの、全体としての内容には少々失望した。

 失望の理由の第一は、「老人」でさえそのペ−ジ#66(99年3月19日)

に書いたイタリアにおける実行例(朝日新聞と英国のタイムス紙の記事が事実としての事ではあるが)について全く触れていない点である。朝日とタイムス紙の記事はいずれも本年3月のもので、日本人一人を含む4名が、イタリアでこの技術による治療を受け、いずれも無事に父親になったというものである。従って、この番組がそれを取材しない筈がないと、「老人」は考えたからである。

 鳥取大学の実験が新聞発表されたのは2月の始めである。そして、「老人」はそのことについて、このページ#51(2月4日)に書いた。一方の「クローズアップ現代」は7月8日である。その間5ケ月もある。NHKの取材力は定評がある。また、取材経費も民放と比べると不自由はない筈である。とすると、何故イタリアの例を取材しなかったのであろうか?それとも、取材はしたが、ニュースを得られなかったのか、あるいはニュースを得たがプライバシーを重んじて昨夜の番組で取り上げなかったのか?

 失望理由の第二は、ジェレミー・リフキン的視点が全く欠けている点である。種を異にする動物の「レンタル精巣」の危険性について、NHKのスタッフはリフキン氏の「バイテク・センチュリー」を読んでみる必要があろう。さもなくば、全体としてこのレンタル精巣の問題を、科学の進歩イコール「善」というスタンスでの報道にはならなかったのではないだろうか?あるいは、そのような印象でこの番組を見たのは「老人」だけの偏見なのだろうか?

 と、ここまで書いてきて、どうしてもNHKがイタリアの件に触れていないのが不審でならなくなった。そこで勇気を出してNHKに電話して、イタリアをチェックしたか否かを問い合わせることにした。結果は、さすがNHKである。きちんとチェックしたとの返事であった。

 このイタリアで日本を含む4名の父親が、この技術を使って無事に子供が生まれたという、朝日新聞の3月18日の記事は、英紙タイムズの3月17日の記事をもとに書かれたものであった。そこで「老人」はNHKに問い合わせた。英紙タイムズをチェックしたのか、と。答えはイエスであった。そして、NHKとしては、タイムズの記事自体が誤報であるという結論に達し、そのためイタリア事件には触れないというポリシーを決めたとの事である。

 何故「老人」がかかる質問をするのかと、逆にNHK側から質問された。そこで「老人」は、種を超えた遺伝子操作の恐ろしさについて克明に書いているジェレミー・リフキンの「バイテク・センチュリー」を一読するように勧めた次第である。ただし、「老人」は、この書物を邦訳出版した集英社の回し者でないことをお断りする次第である。

 さて、NHKから一応納得できる返事は得た。すると天下のタイムズ紙が、何故このような誤報をしたのかが気になる。これはこれで究明しなければなるまい。が、どうすれば究明できるか、その方法論については、今のところ良い知恵が思い浮かばない。

 恐らくベストなアプローチは、真正面から編集者に電子メールを送って問い合わせることであろう。メール・アドレスの発見は、「老人」のビジネス・パートナーの力を借りよう。タイムス紙の編集者から説明の返事が得られたら、このページで御紹介する積もりである。

 それにしても、異種動物の体を借りて精子を無理に作るという行為は、得られる利益と将来あり得る危険とを計りにかけると、危険の方が遥かに多そうである。その危険に対して責任をとるのは一体誰なのであろうか?その視点から問題に迫る姿勢が、「クローズアップ現代」に欠けていたのが。「老人」には残念でならない。また、そこまでして己の子供を残そうとする行為は、父親のエゴと言わざるを得ない。医療の名を借りた生体実験とさえ呼べるであろう。

前のページへ     次のページへ

〒435-0026      静岡県浜松市南区金折町733-2    TEL: 053-443-8450    FAX: 053-443-8491

© 2015 Uni-Vite JAPAN LTD, All rights reserved.