日本語     English

#090 30/06/99

奇病「霞ヶ関症候群」

6月29日付の英文読売新聞によれば、環境庁の高官の言として、同庁が遺族の承諾を得ずに、およそ300体の検死体から、精巣と卵巣が採取していたとの事である。その目的は、内分泌撹乱物質(いわゆる環境ホルモン)の研究にあったとの事。

「この件については近親者から苦情が寄せられたため、同庁としては態度を改めて、今後は遺族の同意をあらかじめ取り付けることに決定した由。また、家族の同意なしに、既に採取してしまった臓器からこれまでに得られたデータを、研究の中に含めるか否かについても、同庁としては、再検討している由である。

「環境庁によれば、この研究は1997年に開始したもので、東京と大阪の監察医務院の協力によって行われていたとの事。研究の一部として、監察医が精巣、卵巣、脂肪組織、及び脳等を採取して、分析の目的で保存していたとの事である。

「厚生省の法令によれば、伝染病、自然災害、あるいは死因不明と考えられる場合、死因を特定する目的で監察医が遺体を解剖することになっているが、その際にも、家族の同意なしには、解剖自体も許されぬし、遺体の体の一部を保存することも許されていない。

「同法令によれば、遺族が遺体の返還を希望しない場合には、遺体の一部を研究目的で保管することが許されている。厚生省が環境庁に語ったところでは、必要手続きとして、まず遺族に事情説明を行い、次いで、遺体のいずれかの部分の保存を必要とする場合には、遺族の同意を得ることが望ましい、としている。

「東京都では、本年4月より、監察医務院に対して、遺族の許可を得ることを条件にしている。大阪府では、臓器摘出が家族の同意なしに行われていた事実が最近明るみに出てから、そういった行為を禁じる処置を取ったばかりである。

この記事を読んだ「老人」としては、官僚の無神経さと傲慢さについて、毎度のことながら、改めて強い憤りを憶える。この事件が起こるに至った目的は、確かに内分泌撹乱物質の蓄積状況の調査という、いわば人類共通の利益のためであったという点は、理解はできぬ訳ではない。しかし、この行為の中に、人間の尊厳に対するいささかでも配慮が見られるであろうか?不審なる死を遂げた人々がどのような人生を送ったか、「老人」には知る由もない。そういった人々の死後、その遺体を単なる物体扱いし、遺族の同意さえなしにその臓器を勝手に切り取るという行為は、盗賊行為と何ら変わるところがない。

このような行為を考え付くのは、おそらく有名大学を卒業し、官僚になったIQ指数の相当高い人々なのであろう。自宅に戻れば善良な人々で、良き夫かつ良き父親なのであろう。その善良なる人々が、一度霞ヶ関という官僚王国の扉の中に入った瞬間から、頭の中の「官僚スイッチ」がオンになり、「民」を従える「官」になってしまうのである。官僚スイッチがオンになれば、彼等の頭の中の「良き夫」も「良き父親」も何処かに吹っ飛んでしまい、人間の死の尊厳に配慮する回路がオフになる。本来彼等に必要なのは、IQもさることながら、今こそEQ(Emotional Intelligence by Daniel Goleman =邦訳「EQ心の知能指数、土屋京子訳、講談社刊」)が求められるのだ。

それにしても、この二面性はいったいどうして発生するのか?取りあえず、「老人」としては、この現象を「霞ヶ関症候群」と名づけることにした。

前のページへ     次のページへ

〒435-0026      静岡県浜松市南区金折町733-2    TEL: 053-443-8450    FAX: 053-443-8491

© 2015 Uni-Vite JAPAN LTD, All rights reserved.