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#086 18/06/99

ある金曜日の珍事

過ぎたある金曜日に「老人」が経営する会社に起こった珍事を紹介したい。「老人」は結構マージャンが好きである。その金曜日、「老人」は社員の一人と共に名古屋に出張した。午後遅くには帰社できると踏んだ「老人」は、社員3名とともに、夜にはマージャンをしようと約束して出張した。

「老人」の計算の通り、夕刻5時には帰社可能な時間に仕事は終了した。同行した一人の社員もマージャンのメンバーとして予定されていた。また、別の社員は東京に出張していたが、この社員もほとんど同じ時間に帰社が可能との確認も取れていた。

ところが、「老人」に同行した社員は、滅法甘いもの好きであった。OO時名古屋発の「こだま」の到着にはまだしばらく時間があった。そこでその社員は、「ボス、まだ時間があるので、名古屋名物の”大あんまき”を買ってきます」と言って姿を消した。

予定のこだま号の到着時間直前に、こだま号が遅れるとのアナウンスがあった。そして、「老人」は社員の帰りが遅いので少々苛々しながら待っていた。すると、遅れているこだま号の出発予定時間と時を同じくしてのぞみ号がプラットホームに入ってきたのである。

「老人」は別に気にも留めずのぞみ号の出発を見送った。「大あんまき」を買いに行った社員の帰りが遅いのが気がかりと言えば気がかりではあった。そしてようやく10分遅れでこだま号が到着した。指定席の切符を持っていた「老人」達であったから、社員もいずれ合流するであろうと考えた「老人」は、取りあえず列車に乗り込んだ。しかし、こだま号が発車しても社員は現れない。そして、名古屋を発車して間もなく「老人」の携帯電話のベルが鳴った。電話を手にして急いでデッキに出た。

その電話は、何と「大あんまき」買いに走った社員からであった。彼は言う、「社長、私は間違ってのぞみ号に乗ってしまいました!」と、悲痛な声である。そして、「老人」が答える。「そうか、それでは今夜のマージャンは”のぞみ”なしだね!」、という訳で、取りあえずマージャンの楽しみはお預けと諦めて、東京・名古屋間に位置する、あるこだま号の停車する駅の近くの会社に戻った。

ところが、帰社した「老人」を襲うのは、東京に出張し、その夜予定したマージャンのメンバーの一人からの脅迫電話である。「今夜の中国語学習会は予定通りでしょうね、社長!、私は超特急でそのために仕事を終えたのですからね。流会は許しませんよ!」である。「老人」が恐る恐る、名古屋への出張に同行した社員の失敗を説明すると、東京出張の社員はしつこく、「東京からひかり号で折り返せばまだチャンスはあります。社長、何とか電話で連絡して、まだチャンスがあることを伝えて、ベストを尽くすように伝えて下さい。さもないと、私は怒りますよ」という明らかな脅迫である。

「老人」は慌ててJRの時刻表を調べた。すると、何としたことか、確かに名古屋発のぞみ号の東京着後5分で、「老人」の会社のある町に停車するひかり号があるではないか!そこで早速「老人」は名古屋へ同行した社員に電話連絡を取った。「X君、急げば間に合う、君の列車の東京到着後5分で発車するひかり号があるぞ。何とか掴まえて帰って帰給え。さもないと、Y君が怒るぞ」である。

さて、結末は、メデタシ、メデタシで、名古屋から東京廻りで帰った社員は、驚いたことに、予定した中国語レッスンの時刻に、奇跡的に間に合ったのである。ただし、この大回りをして帰ってきた社員がマージャンで大負けをした事は言うまでもない。しかし、それも考えて見れば、彼の行った大旅行からして、負けたのも無理からぬことではある。何しろ。マージャンの前に、半日で600kmを超える旅をしたのだから。

ところで、後で良く考えて見ると、東京出張の社員と、名古屋大回りの社員とは、東京と「老人」の会社のある市の間の何処かで、10メートルを超えない距離ですれ違っていたのである。そのすれ違いの瞬間、東京出張の社員はいらいらし、一方の名古屋大回りの社員は「大あんまき」を食っていたのではないだろうか?

このような「粗忽社員」と「脅迫社員」に囲まれて、しかもなお、中国語を学ぶ「老人」の会社の経営状態は、果たしていかがなものであろうか?取引銀行には教えられない話しである。

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