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#085 16/06/99

農水省が遺伝子組替え食品の安全性をようやく検討か?

6月16日のある地方新聞によれば、農水省がようやく重い腰をあげ、遺伝子操作による農産物の安全性についての検査手順の見直しに入る様子である。これは、米国の科学者が、害虫に強い遺伝子操作コーンがチョウ(蝶)に被害を及ぼすと指摘したというニュースを受けてなされた決定であろうと「老人」は思う。

5月20日に米国の科学誌「ネーチャー」に発表されたコーネル大学の研究チームの研究によれば、トウモロコシの害虫のガ(蛾)を殺すように遺伝子操作されたBtコーンの花粉をかけた葉を、オオカバマダラというチョウの幼虫に食べさせたところ、4日で幼虫の44%が死んだということである。

Btコーンは米国のバイオテク会社、パイオニア・ハイブリッド社が開発したもので、主として北米で栽培されており、およそ全米で生産されるトウモロコシ全体の20−30%程度を占めると推定される。Btトキシンは葉と花粉に発現するが、害虫から身を守り、それによって通常使用する農薬の量が減ることになる。農薬の多くはPOPと呼ばれ、土壌に長く残留する。

Btコーンはガを含む特定の昆虫にのみ有害で、他の生物には害を及ぼさないと考えられていたが、コーネル大学の研究者によれば、ほとんどのハイブリッド植物は花粉にBtトキシンが発現するので、風に乗って60メートル以上も飛散するので、その危険性が指摘されている。またコーンの花粉は、畑の近辺にある他の植物に付着して、その植物を食べるコーンの害虫以外の昆虫を殺す危険があるとのことである。

これまでの日本の農水省の基本スタンスは、「チョウはコーンの葉を食べないから問題なし」というものであったが、このネーチャー誌のニュースによって姿勢を変えざるをえなくなった。少し遅れた変更でも、全く変更しないよりはましと「老人」は考える。しかし、それにしてもわが国の官僚の対応は何故かくも遅いのであろうか?

「老人」のイギリスの友人筋から得た情報では、EU委員会は既に本年5月に、パイオニア・ハイブリッド社から出された、Btコーンの輸入申請を凍結している。また、英国のチャールス皇太子は遺伝子操作した食品は口にしないと言明している。更に、英国の冷凍食品小売チェーン大手の「アイスランド社」は去年の3月に、遺伝子操作食品を取り扱わぬことを表明し、その結果として、売上が急増している由。また本年3月に、英国政府は、遺伝子操作食品については、小売業者もレストランもその旨を表示するよう義務付けることを決定した。

一方の日本では、農水省がようやく重い腰を上げて、これから遺伝子操作された植物の花粉飛散の実態を調査して、他の生物への影響も調査すると言うのである。そして、農水省の高官の言では、本年末までに遺伝子操作コーンの安全性の評価項目や、生態系に与える影響についてのガイドラインを完成させるとの事である。誠に呑気なものである。

「老人」思うに、Btコーンはアメリカの会社が開発したものである。それがEUへの輸入を凍結されたということになれば、成長ホルモン使用の牛肉の輸入禁止問題によるUS・EU間の「口による戦争」と同様に、「今一つの戦争」の引き金になりそうである。

それにつけても、日本政府は、論戦さえ出来ない「平和愛好政府」であると同時に「動きの遅い政府」である。農水省の役人は、是非一度ジェレミー・リフキン著の「バイテク・センチュリー」を読むべきであろう。遺伝子操作の恐ろしさが理解できる筈である。わずか2000円の本である。得るものの大きさと比べると安過ぎる価格である。

せめてイギリス政府と同様に、遺伝子操作食品については表示義務を負わせることが何故できないのか?クローン牛も当然ながら同じく表示義務を負わせるべきである。何故たったそれだけのことを実行しないのか?「老人」としては理解に苦しむ。農水省の役人と業界の癒着があると考える以外にないようである。

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