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#082 10/06/99

ヨーロッパ連合、牛の成長促進ホルモンに発ガン性ありと主張

下に引用するのは、ロンドンの「化学と産業(Chemistry & Industry)」誌5月17日号に記された記事である。その内容は、しばらく前から米国とEU諸国の間でもめている、成長ホルモン剤を使った牛の肉の輸入について、EU側がこれを禁止している問題である。

先ずは例によって、同記事の引用から始める:「USとEUの間の、成長ホルモン使用の牛肉の輸入を巡る論争に関して、EU側の新しい武器がベールを脱いだ。今月(5月)始めにEU科学委員会により発表された報告書がそれで、成長促進ホルモンを与えた動物の肉が消費者にとって危険であるとする説を裏付ける新しい証拠があると言うものである。

「EUが1989年に使用禁止にしたのは6種類の成長ホルモンであり、天然ホルモンの17ベータ・エストラデイオール、プロゲステロン、テストテトロンに加えて、化学合成のトレンボロン、ゼラノール、メレンゲストロール

等である。これらが現在も広く用いられている米国とカナダからの苦情を受けてWTOはEUに対して、5月13日までに禁輸を解くように要求していた。

「EU報告書によれば、17ベータ・エストラデイオールに発ガン性があることを示す証拠が充分あるという。加えて、同報告書は、上記の6種のホルモンには、内分泌上、免疫上、神経生理学上、遺伝子毒性上、免疫毒上各種問題があり、なおかつ発ガン性があるとされている。

「同レポートが更に指摘するのは、現在の知見では、危険を定量的に計るのは困難であり、危険度は年齢によっても異なり、子供が最も影響を受け易いとの事である。そして、結論として、閾値も不明、体内摂取許容値も不明な現状では、禁輸は継続すべしとされている。

「同レポートは、WTOから禁輸は違法であるとした警告を受けて、EUが行った17の調査の中で最初のものである。17の調査の中の、その他の部分が完成するのが本年末の予定なので、それまでは解禁は出来ないとEUは主張している。

「WTOの警告する期限が近づくにつれて、EUとしては米国側と、その政策変更の可能性について打ち合わせを行ってきた。その中にはホルモン使用を表示して輸入販売する案も含まれていた。しかしながら、EU側の態度は、このレポートを受けて、次第に硬化しているように見える。EUの消費者問題担当委員のエンマ・ボニーノの言では、”ホルモンを禁輸する努力を強化する委員会の姿勢は正しいことを、科学的証拠が示している”、との事である。

「米国側はこのレポートに対して怒りを示し、農務長官のダン・グリックマンによれば、EU側のレポートは、すでにWTOによって否定された科学的根拠を繰り返しているに過ぎない、という事になる。

「米国はすでに9億ドルに昇るヨーロッパからの輸入の削除リストを用意しており、ヨーロッパが禁輸を止めない限り、報復的に適用する用意をしている。


さて「老人」がこの記事を引用した理由は、昨日書いたページ81(6月9日付)にて大いに批判したところの、わが農林省のクローン牛出荷を勝手な判断で出荷すのを目こぼした(あるいは意識的に)という怠慢と比較して、EUの担当者の、発ガン性の疑いのある牛の肉に対する断固たる態度を紹介したかったからである。

勿論、「老人」は、EU対USの、この問題の詳細は知らぬし、背景も承知していない。しかしながら、もし、この記事にあるEUレポートがきちんとした科学的根拠を示しているとするなら、特にそれが発ガン性の疑いを明確に示しているならば、米国側の主張するホルモン牛の輸入解禁要求は、少なくとも「老人」の目には、非論理的かつごり押しのように見える。

また、WTOが、そもそもいかなる根拠に基づいてEU側が提示した科学的根拠を退けたのであろうか?「老人」にとっては、これは何とかして知りたい点である。なにしろ、科学的と称されるものと、科学的でないと称されるものの間の境目は、はなはだ曖昧模糊としているからである。

とにもかくにも、「老人」としては、今後アメリカへの出張の際には、牛肉は断固として口にしない決心をした次第である。

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