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#074 10/05/99

クリス・ムーン氏の自伝「もう一歩先へ」が出版される

4月18日付け英国の「インデペンデント紙」を偶々インターネットで検索したところ、昨年の冬季オリンピック長野大会の開会式をTVで見た日本人の多くが、恐らく未だ記憶しているであろう英国人の聖火ランナークリス・ムーン氏が自伝を出版したという記事に巡りあった。アフリカのモザンビークで地雷除去作業にボランテイアで従事中に誤って地雷が爆発し、片手と片足を失ったにも拘らず、明るい笑顔を振り撒きながら聖火を持って大会会場に走りこんで来たあの青年である。

同紙によれば、同氏の年齢は36才。今から6年前(1993)にはカンボジアで地雷除去作業中にクメール・ルージュに誘拐されるが、無事に脱出。4年前(1995)には、上記のようにモザンビークで地雷事故で片手と片足を失う。これにもめげず、その後20回以上もマラソンに出場、その中には、世界で最も過酷と言われるサハラ横断レース(240キロレース)も含まれている。しかもその目的は、自分が属するボランテイア団体ハロー・トラストへの献金であると言う。そのクリス・ムーン青年が自伝を出版したのだ。自伝のタイトルは「もう一歩先へ(One Step Beyond)」という。

NHKのテレビで同氏の笑顔をみた瞬間から、その大フアンになっていた「老人」は急いで英国のパートナーに電話をした。この自伝の購入と発送の依頼である。このページにも、同氏のことと地雷除去について何度か拙文を書いている「老人」としては、日本でも洋書の入手はインターネットで容易に可能なことは知っていた。でも、少し時間が掛かる。そのわずかな時間を待てないのがフアンのフアンたる所以なのである。

そのクリス・ムーン氏の自伝が今日「老人」の事務所に届いた。もはややりかけの仕事も手につかず、「老人」は早速ページを開いた。先ず序文がある。ムーン氏と同じボランテイア団体に属するあるカンボデイア人(つまり仲間の一人)が書いている。そして、その内容が素晴らしいのだ。そこで今日は、本文に入る前の序文をこのページで紹介したい。

「私の国にはこれまで多くの悲劇が起こってきた。ポルポト時代に私は口に出来ないほどの恐怖を見た。私の友人や家族の多くの死にも立ち会ってきた。生活も苦しかった。でも私は運が良かったと思う。英語を習得できたし、家族を養える仕事も手に入れたからだ。多くのカンボジア人は今でも、生きるに十分なだけの米を入手するために苦しい思いをしている。今なお多くの苦しみと貧困がある。でも祖国は美しく、人々も美しい。私は40才に近いが、妻と二人の素晴らしい子供達に恵まれている。そして私はカンボジア人なのだ。私はそれを誇りに思うし、ハロー財団の仲間達とともに、自分が行っている地雷除去の仕事も誇りに思う。

「初めてクリス・ムーンに会ったとき、疲れも知らず地雷を除去して、自分のスタッフとカンボデイア人の安全を確保しようとする意思の強い男を見た。体力も強く、毎日駆け回っていた。「志」の高い人物で、安全手順を遵守し、自分で出来ない事を他人にやらせる事の出来ない男であった。そして何事も常に先ず自分が率先してやって見せるのである。だから常に他人に尊敬され、スタッフからも好かれるのであった。ユーモアのセンスもあり、正義感も強く、他人への思いやり、特にハンデイキャップをもつ人々への思いやりは独特のものであった。

「多くの村からの地雷除去の依頼と、全ての党派からの(安全)保証があったにも拘らず、クメール・ルージュはクリスと私を誘拐するという暴挙に出たのである。誰もが驚いた。村の人々は、我々は拷問を受けてから森で殺されると思っていた。クメール・ルージュと共に食事をする度に、私はいつもそれが最後の食事と思っていた。が、クリスは違っていた。穏やかに、先ず相手を理解しようと勤めた。そして、何処から見ても難しい状況の中で我々の釈放を(話し合いで)勝ち取ったのである。この話し合いの間に、我々は共に、本当の意味での孤独、友情、信頼とは何かを理解した。そして、現在クリスと私は兄弟の絆で結ばれている。

「私には、何故罪も無い人々に悪い事が起こるのか、その理由が理解できない。しかし、それでも理解できる事が一つある。それは、物事を変えるには良い人々の努力が必要だということである。その実例が人々に勇気を与えるのである。クリスがいつも言うのは、「誰にでも物事を変える可能性があるのだ。そして、誰でも他の誰かに協力の手を貸すことが可能である」という事だ。

「彼が地雷にやられたと聞いた時、私には始めそれが信じられなかった。彼は私の知る中で最も注意深い男の一人であったからだ。でも私には、彼が自己憐憫に陥ったりしないと分かっていた。必ずや負傷から立ち直ると信じていた。彼が書いたこの本は、勇気と、信頼と、逆境を克服する人間精神の勝利の物語である。クリスは健康を回復すべく一歩一歩戦った。そして、地雷除去と、地雷によって負傷した人々のための資金集めを始めた。そこで私は、我々の行っている仕事のことを本に書いてはどうかと提案した。そしてかれはこうして自伝として書いたのだ。

「カンボジアで現在でも人々を傷つけている地雷を取り除くことは可能である。しかし、そのためには多くの方々の協力が必要である。もしも、本書を読んだ読者が、我々の仕事を支援しようと思ってくだされば、望外の喜びである。

ホウン・サムリン

ハロー・トラスト

PO Box 7712

London, SW1V 3ZA

「老人」から、この拙文を読んで下さる読者にお願いがある。このハロー・トラストというのはHazardous Areas Life Support OrganizationというNGO団体である。外国のNGOとの接触は確かに面倒である。しかし、それなら日本のNGOはどうであろう?「老人」がこのページ#52に書いた「草の根外交官」の所在を発見した。東京にあるNGO「難民を助ける会」という。電話は03(3491)4200である。ゴルフなり、その他に使うポケット・マネーの一部をほんの少しでも献金して、自分の力で地雷を何個かでも取り除く作業に参加しようではないか!

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