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#061 03/03/99

日本で初めての臓器提供者と臓器移植

2月最後の日曜日に、わが国で臓器移植法が成立してから初めての脳死後の臓器ドナーが現れた。メデイアの過熱によるドナーに対するプライバシーを侵害する行為も見られ、今の日本でこの事件を知らない人はいないに違いない。

心臓、肝臓、腎臓および角膜が提供され、合計5名の人々が、この尊い犠牲からの恩恵を受けた。心臓、腎臓、角膜の提供を受けた患者は、特に報道されていないので、いずれも順調なる経過をたどっておられると「老人」は考え、いずれ社会復帰を果たされることを心から祈っている。

ところが、肝臓の提供を受けて、信州大学で移植手術を受けた患者だけは、本日(3月3日)現在、経過が思わしくない様子である。肝機能が低下したままである。

と、ここまで書いたところで、本日の夕刊が配達された。それによると、同患者の容態は回復傾向にあるという報道である。執刀に当たった信州大学の川崎教授が、未だに慎重を期して、人工呼吸器を付けたままで、肝機能の数値や黄疸の進行状況を注意深く見守るとのコメントを発表している。

ところで、この信州大学の川崎教授といえば、「老人」は、このホームページを開始した直後に一度同教授について一文を書いている。それは、ページ#6であり、昨年の7月の27日に書いたものである。

タイトルは「肝臓移植についてスタッタフォード博士の報告書」というもので、川崎教授が開発した手法によってイギリスで初めての肝臓移植手術が行われたという、英国を代表する新聞The Timesの記事を読んで「老人」が書いたものである。

日本のみならず、世界中で臓器の供給は需要に比べて極めて少ない。そのためにであろう、この川崎教授は、肉親から肝臓の一部(左葉)の提供を受けて、それを移植するという手法を世界で初めて開発した人物として世界的に知られている人物である。しかも、この川崎方式はすでに700件の手術が実行され、その90%が成功しているとのことである。

日本移植学会によると、欧米やオーストラリアで行われている脳死心臓移植は年間3,500件、肝臓移植が8,000件にも達する由である。

すでに一度このページ#49(2月1日付け)で記した、「老人」が深く尊敬するジェレミー・リフキン氏によれば、既にして人工子宮ができている。これによれば、生きた母親の子宮内より遥かに安全に管理されているため、胎児の成長速度も速くなり、通常の9ケ月ではなく6ケ月以下の期間で「出産」させることが可能な由である。

更には、科学者達は、「頭」を除いた人体をクローン技術によって、人工子宮内で生育させ、人間の部品として使用する時代が近い将来には到来すると考えているらしい。そもそも「自分」の細胞から生み出した「人体」であるから、移植しても拒絶反応も起こらない。また、この部品としての「人体」は、頭が無いので人間ではない。従って、それを利用することには倫理的問題はない、という考えである。

ここにきて、日本人の「死生感」も大きく変わらざるを得なくなろう。例えば3月2日付けの日経産業新聞には、名古屋大学医学部の上田教授が口腔外科という専門領域から、歯を抜いた時に出る歯茎の粘膜から皮膚を培養する技術を開発し、この商品化を目指して民間の数社と共同で、皮膚を培養し販売する会社を設立している。歯茎に付着した粘膜組織は幼弱な組織で、免疫反応は弱く、移植適合性が高い由。火傷の治療やあざの消去など約100名の症例に用いられ約80%の確率で治療に成功しているとの事である。

腰の重い厚生省も、こうした商品化の動きに対応して、ヒトから提供された組織を医薬品として承認するためのガイドラインを作成中であり、「早ければ年内に完成する」との事である。

好むと好まざるとに係わらず、来世紀には、こういった新技術の使用は日常化するであろう。特に、問題を抱えた親が、自分のためというよりは、むしろ子供のために何とかしたいという、親心から発する欲望から新技術の発展に拍車がかかる傾向を阻止するのは不可能であろうと、リフキン氏は指摘している。

各人それぞれに改めて己の「死生感」を見つめ直す時期が迫っているのだ。

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