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#014 25/08/98

栄養欠乏症と不足症との大きな相違

前にも触れたわが友人のクレイトン博士が常々口を酸っぱくして「老人」に注意してくれている事が一つあり、今日はそれを日本のわが同胞にお伝えしたい。

それは各種の微量栄養素、つまりビタミンやミネラルであるが、これらについて、彼は自国の医者でさえ正しく理解している人が少ないと嘆くのである。英語で彼はDeficiencyとDepletionの相違という。英和辞典で引いてみると、両方とも「不足」即ち十分でない状態を意味する。

「老人」にとってはどうも良く判らない。そこで医学的専門用語ではどう定義するのかと食い下がって尋ねると、彼はこう答えた、「前者は例えばビタミンC欠乏症を意味し、医者なら大学のテキストブックには、その症状として壊血病として説明されているので、医者なら誰でも知っているし、今では発症例も少ない。従って、これは問題ない」とのこと。

彼は続ける。「問題は後者、つまりDepletionなのだ。不足には違いないのだが、欠乏症のようなドラマテイックな発症はないが、じわじわ発症するのでなかなか発見できない。そして、発見された時には、場合によってはもはや手遅れ、という事態になることが多い、しかも、この例が増加している」との事。そういう症状を医学的にはどのように呼ぶのかと「老人」はしつこく食い下がる。素人にとっては知らぬ事は知らぬのだから、分からぬ事は尋ねるしかない。

彼によると、慢性的不足症から発生するのは、例えば動脈硬化、糖尿病、ガン、関節炎、アルツハイマー、骨粗しょう症等々、「老人」にとっては、伝染病を除く殆ど全ての病気に聞こえる次第。しかも彼は続ける、こういうのを総称して「非伝染性変性疾患(Non-communicable degenerative diseases)」と呼ぶらしい。で、微量栄養素との関係は?と「老人」が問えば、驚くことに、不足が発生してから症状が現れるまでに時間が掛かるのでなかなか分からない。医者の方でも古典的な欠乏症のことしか知らない医者が多いので、正にそれが問題なのだと言うではないか。彼のポイントをまとめると次のようになる。

先ず、欠乏症とは一連の明確かつ典型的な症状を伴うもので、急性の欠乏症であり、栄養素の欠乏が始まってから比較的短期間に、即ち数ヶ月単位で発症するものの様子。例えば、脚気(ビタミンB1不足)、ペラグラ(ナイアシン不足)や壊血病(ビタミンC不足)等を含むこのような古典的欠乏症は、殆どが水溶性の栄養素の欠乏症である。水溶性栄養素を体内に蓄えるのが難しいからである。勿論、例外もあるが、多くは尿と一緒に体外へ排泄されるからである。ビタミンCの体外排泄は、今では、活性酸素の体外排出のメカニズムとして知られている。栄養欠乏症が発生してから実際に症状が現れるまでの時間が短いため、医師にとっても、欠乏症と症状との関係を発見し易いのである。

これに対して、「栄養不足」の方は、特定栄養素の量が、症状の発現を抑える程度にはあるが、長期的に見て十分とは言えない量、つまり最低ギリギリの量の場合を言い、症状が本当に発現するまで何年も掛かるし、発見もそれだけ難しい。例えば、今時では、壊血病の患者を発見することは滅多にない。しかし、 

加工食品の普及のお陰でビタミンC不足は、密かに進行している(少なくともイギリスでは)。

今一つの水溶性微量栄養素として葉酸がある。これが不足すると新生児の二分脊椎児(先天的奇形の一つで、脊椎骨の形成が不十分で、そのため脊椎骨中央が癒合して、脊椎管が開いたままの状態の新生児)が生まれる可能性が高まる。これに加えて、心臓病のリスクも増加する。葉酸は肝臓に蓄えられる。だから、摂取する食品に葉酸が不足しても、しばらくは何とか持ちこたえられる。だからなかなか気が付かない。そして、気が付いた時には何らかの重大なる疾患が発生している、という事が多い由。

では一体、われわれ「非医者」はどうすれば良いのか?と「老人」としては考え込んでしまった次第。すると彼は、だからこそ消費者への啓蒙が必要なのだと言う。そして、自身の執筆した「健康革命」の日本語への翻訳を依頼されてしまった次第。気楽に引き受けたが、今にして思えば、大変な事に巻き込まれてしまったのは、実はあの時だったのだ!

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