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健康に老いるにはグルタチオン(GSH)

 アミノ酸の1種であるこの坑酸化物質は、これまで触れた他の坑酸化化合物とは異なっています。微量栄養素とも違います。違うという理由は、グルタチオンはわれわれが体内で、すなわち、自分自身の細胞内で作り出すからで、その点でこれはおそらく坑酸化物質あるいは解毒剤として最も重要な働きをすると言って良いでしょう。この生命に関わる重要な化合物をつくるエネルギーは細胞内のミトコンドリアが生み出します。したがって、ミトコンドリアが不具合になればグルタチオンの生産レベルは低下し、細胞自身は活性酸素の攻撃に曝されて死ぬことになります。

 加齢とともにミトコンドリアの活力は低下します。グルタチオンの生産レベルも低下します。活性酸素によってミトコンドリアが受ける被害もしだいに蓄積され、そのエネルギー生産も低下します。そしてグルタチオンがさらに減ることになります。そして、この悪循環が繰り返されます。要するに、これが老化の進行するプロセスなのです。

 グルタチオンの生産レベルは加齢とともに低下するのが一般的ですが、これには例外もあります。そしてそれは特に健康的な高齢者の場合です。このような健康人の場合は、健康であるがために、生物学的に見た加齢が遅いだけでなく、それに加えて、グルタチオンの生産レベル自体をも高く保つという組み合わせ効果があるのです。60才以上の人々33名についての、あるアメリカでの研究によれば、グルタチオンの生産レベルが最も高い人々が最も健康であったと報告されています。血圧もコレステロールも低く、もちろんオーバーウエイトもなく、平均よりもはるかに健康であったと言います。

 これとは全く反対の場合、つまり何らかの慢性疾患の患者、心臓疾患、関節炎、糖尿病などを持つの人々の場合、グルタチオンのレベルが平均値を下回っていたのは当然です。急性呼吸不全のケースではまさに劇的とも言うべきグルタチオン低下が見られ、その場合の死亡率は50%にまで達します。エイズ(後天性免疫不全症候群)及び無症候性HIV(ヒト免疫不全ウイルス感染症)の場合も同じです。

 以上述べたことから見ると、グルタチオンの生産レベルを高く保つのは大変望ましいことに思われます。動物実験の結果もそれを裏付けています。たとえば、蚊を例にしましょう。グルタチオンのレベルを高めると寿命が約40%も延びます。しかもグルタチオンを高めることにはいっさい危険は伴いません。動物実験では、1日に体重1キログラム当たり250ミリグラムを投与してもまったく問題はありません。これをヒトに当てはめると1日当たり約15グラムになります。これまでに行われた臨床研究での投与例は1日当たり300から600ミリグラムですから、ヒトの臨床例は蚊の場合とはとても比較にならないほどの低いレベルです。

 グルタチオンの分子は小さいので、消化管から容易に吸収されますが、吸収されても、その多くは細胞内部にまでは入りません。しかし、細胞の外からでも、細胞表面と相互に作用しあうかたちで積極的に働きます。エンドルフィン受容体を制御することによって免疫システム、性ホルモン生産、認知強化を促進する結果になると考えられてきました。また、グルタチオンは炎症伝達物質のリューコトリエンの生産を抑えることによって関節炎や喘息に好い結果をもたらすと主張する科学者もいます。

 薬物として投与した場合は、グルタチオンは細胞内のグルタチオンのレベルアップにはつながりません。グルタチオンの前駆体であるアミノ酸の1つであるシステイン、あるいはNアセチルシステインは、この点では同じです。多くの製薬会社が化学合成のグルタチオン・エステル等の開発に躍起になっていますが、今のところようやく1社が細胞内グルタチオンのレベルアップに成功しているだけです。

 これに代替する方法としては、システイン前駆体を用いることです。その1つは、通称OTC(L2ーオクソチアゾリデインー4ーカルボキシル酸)と呼ばれますが、これは細胞内に入り込み細胞内のシステインとグルタチオンの生産レベルを上昇させることが可能となり、急性呼吸不全とエイズの臨床テストで好結果を出しています。このOTCは新しい分子で特許になっていますが、いずれ薬品として登場してくると思われます。その登場を待ちきれない、あるいは薬物に頼りたくない場合は、栄養的アプローチしかないわけです。この場合はグルタチオンの前駆体であるシステインか、グルタチオン類似のアルファ・リポ酸、抗酸化物質でありながらかつミトコンドリア応援団でもあるビタミンQ(補酵素Q10)およびベータカロチンなどを組み合わせて使用するのが良いでしょう。

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