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悪玉酸素は一人二役、時には正義の味方?

 活性酸素を完全に避けることは不可能です。また、避けるわけにはいきません。活性酸素の中には健康に良いものもあるからです。ここで、活性酸素がどうして発生するのか、また、活性酸素の良い役割について少し述べてみます。

 本章の始めに、筆者は「遅い燃焼」という言葉を用いました。「燃焼」に酸素は不可欠です。われわれ人間も酸素なしには生きられません。酸素を考える場合、われわれは生命そのものを呼吸するというイメージでとらえます。まったくその通りです。しかしながら、酸素こそ「両刃の剣」なのです。色も臭いもないこの気体は生命の源です。そのくせ、酸素は活性酸素を形成するという点で、人体をむしばむ各種の疾患を生みだすのです。そして、その結果として人に死をもたらすものなのです。

 人体が酸素を必要とするのは、食べたものを「燃焼」させるためです。「燃やす」と言っても良いでしょう。そして、燃やすことによってエネルギを発生させ、それをATP(アデノシン5’−三リン酸)(訳注三)に輸送します。このATPはエネルギー分子で、すべての細胞の活動に燃料を供給します。そのエネルギーによってわれわれは成長し、活動し、体を修理し、つまり生活が行われるわけです。一般に、エネルギーの輸送の効率は絶対に100%とはいきません。それでも、人体の場合のエネルギー輸送効率は結構うまく行われていて、呼吸する酸素のおよそ95%はATPへ運ばれます。

 では、残りの5%はどうなるのでしょうか。実は、これが活性酸素を形成するのです。計算してみると、人体は一年間におよそ2キログラムの活性酸素を作り出していることになります。

 前述したように、活性酸素のすべてが悪者なわけではありません。相当量の活性酸素は免疫細胞によって作られ、外来微生物から身体を防御するシステムの一部として不可欠な役割を果たしています。体内で作られる活性酸素は、そのほんの一部ではありますが、たとえば細胞分裂を制御する細胞内信号として重要な役割を果たしてさえいるのです。しかし、活性酸素の生産が過剰になると、このような生理的に不可欠な機能を逸脱して、組織にダメージを与え始めます。そして、病気や老化加速の原因になり、「悪役」として作用し始めるのです。

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