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八〇代で五名に一人

 現在最も恐れられている病気の一つはアルツハイマー病でしょう。特に、世界中でも最も平均寿命が高い日本における高齢者にとっては、ますます恐れられるようになっています。六五才以上の人々の場合一〇〇人に二人、つまり二%が罹患していますが、その罹患率は年とともに急速に上昇し、八〇代には五人に一人、つまり二〇%にまで達します。見方によっては、この病気の患者こそが最も被害が少ないとさえ言えます。見当識があやふやになるにつれて己の向かっている運命への意識も次第に不透明になっていくからです。緩やかに進行する心的能力の低下と人格の喪失が周囲の介護者(多くの場合娘達や妹たち)に大きな重荷になってのしかかります。それだけではなく、膨大な社会的、経済的コストも発生します。この病気の一層悲劇的なところは、身体のその他の部分が健康な人にこれが起こり、普通の平穏な隠退生活を奪い、孫たちを奪い、年相応の知恵と記憶を奪い去るところです。

 極く最近までは、この病気に関しては手がかりさえ皆無な真っ暗闇でした。治療法もなく、病気の進行をストップするはおろか遅らせることさえお手上げな状態でした。しかし、今ではそれも変わりつつあります。製薬業界からいくつかの化合物(薬品)が登場しました。例えば、タクリン(Tacrine)は病状の進行を遅くする効果がありそうです。より喜ばしいのは、アルツハイマー病の発症原因も判明しつつあり、栄養学的アプローチで発症プロセスに「待った」を掛けられる可能性も見え始めています。病気の早期発見と治療開始が早めになされれば治療さえも可能かも知れません。

 この大胆とさえ思われる発言の裏付けとして、まずはこの病気の諸々の発症原因を詳しく検証してみたいと思います。本章で筆者はいくつかの証拠を検証してみます。そして、「脳の化学」をうまく操り、もっと心に優しい、神経毒のすくない環境へ持っていくことが可能か否かを示したいと考えます。

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